『ヒートショック』に注意!建てる時から考えておきたい住宅のヒートショック対策

皆さんは、『ヒートショック』という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?ヒートショックは、近年社会問題にもなっており、安全なはずのご自宅内で高齢者の死亡事故を引き起こしてしまう非常に恐ろしい現象なのです。このヒートショックは、急激な温度差によって血圧が大きく上下してしまうことから、血管や心臓に負担がかかってしまいさまざまな健康障害を引き起こすものです。例えば、冬場などでご家族が快適に過ごすため暖房で温められたリビングなどから、冷え切った浴室やトイレなどに移動する場合などに引き起こされるケースが多く、特に高齢者ほどヒートショックが起こる確率が高くなると言われています。

近年では、ヒートショックによる死亡事故が年々増加していると言われていますし、誰もが注意しておかなければならない問題です。そこでこの記事では、ヒートショックを防ぐために考えておきたい家づくりについてご紹介したいと思います。

ヒートショックの基礎知識

ヒートショックについては、高齢者の死亡事故が増えていることもあり、テレビなどのメディアなどでも頻繁に特集されるようになっています。冒頭でご紹介したように、本来安全なはずの住宅内において、部屋と部屋を移動する際など、そこに急激な気温差がある場合、血圧が大きく上下してしまうことで心臓や血管に疾患が起こるものだとされています。ヒートショックは、脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞など、命に係わる症状を引き起こしてしまう非常に恐ろしいものなのです。

特に、ヒートショックによって亡くなってしまう人は、全国で年間1.4万人に上ると言われており、これは交通事故による死亡者数を大きく上回るとさえ言われているのです。したがって、2世帯住宅など、高齢者との同居を前提とした建物を建てる際には、ヒートショックのメカニズムをおさえておき、事故を防ぐための対策が必要になるのです。

ヒートショックのメカニズム

それでは、ヒートショックが引き起こされるメカニズムを簡単にご紹介しておきましょう。ヒートショックは、気温が下がる冬場などに発症するものです。近年では暖房器具が進化していることもあり、冬場に長時間家族が過ごす部屋などにはほとんどの場合エアコンが設置されています。そして、部屋に人がいる時には暖房をつけて冬場でも暖かく快適に過ごせる気温を保っているわけです。

ヒートショックは、こういった暖かい部屋から暖房などが効いていない寒い脱衣所や浴室、トイレなどに移動した際に引き起こされます。暖かい場所から、急激に寒い場所に移動するときには、その寒さに体が対応するため、血圧が上昇するのです。暖かい場所から脱衣所に移動し、そこで衣服を脱いで浴室に移動すると、さらに血圧が上昇します。その後、シャワーで暖かいお湯を浴びたり浴槽に入ると、今度は急激に体が温まり血圧が低下することになるのです。

この血圧の急激な上下がヒートショックの原因となります。ヒートショックが11月~2月などの冬場に良く発生するのは、暖房によって部屋と部屋の気温差が非常に大きくなるからです。基本的には、10℃以上の温度差がある場合はヒートショックの危険があると言われているのですが、冬場の部屋間の気温差は30℃近くになることも珍しくありません。さらに、冬場は良く温まろうと、長時間お風呂に浸かる人も多く、この場合はさらに気温差が大きくなってしまうため、血管や心臓に負担がかかってしまう訳です。
こういったヒートショックのメカニズムを理解すれば、どういった対策を行えば良いのかある程度想定できますよね。以下でヒートショック対策もご紹介していきます。

ヒートショック対策を考えた家づくり

それでは、家を建てる時から注意しておきたい『ヒートショックを起こさないための家づくり』とはどのような点に注意すれば良いのでしょうか?上述したように、ヒートショックは、部屋を移動する際の『気温差』が大きな原因ですので、できる限り「高気密・高断熱の家」を目指すことや、寒くなりがちな脱衣所・浴室・トイレなどの暖房対策が重要になるのです。

ここでは、家づくりの時点から考えておきたいヒートショック対策についていくつかのポイントをご紹介していきます。なお、以下で紹介する対策は、リフォームでも取れる対策となりますので、家の中で冬場の気温差がある…と自覚がある場合、取り入れてみてはいかがでしょうか。

高断熱の住宅を作る

まず、ヒートショック対策を考えた場合の家づくりで、最も考えておきたいのが高断熱の住宅を作るということです。高断熱住宅は、外壁や内壁の間に断熱材を充填したり、断熱性が高い窓を採用することにより、住宅全体の断熱性能を上げるものです。
『断熱』とは、文字通り「熱を遮断する!」という意味ですので、高断熱住宅は冬場のヒートショック対策になるだけでなく、夏場に外気温の影響を受けてエアコンが効きにくい…室内の気温が上がってしまう…なんてことを防いでくれるのです。
高断熱住宅を実現すれば、季節関係なく室内の快適な温度を保つことが可能になり、ヒートショックの可能性を下げてくれるようになるでしょう。

浴室のヒートショック対策

ヒートショックが非常に起きやすいと言われるのは、住宅の中でも浴室や脱衣所です。今まで暖かかったリビングにいた人が、脱衣所や浴室の寒さでヒートショックを発症してしまうのです。したがって、浴室に対するヒートショック対策は非常に重要だと言えます。
例えば、浴室に導入するバスは細心のユニットバスなどを選べば、それだけで浴室内の暖かさが格段に違うと言われています。さらに最近では、浴室暖房機の導入をヒートショック対策で導入する方が増えています。お風呂は水を使う場所ですので、持ち運びができるとは言えヒーターなどを持ち込むことは難しいものです。しかし、ヒートショック対策を考えた場合、あらかじめ浴室内を温めてお風呂に入れるようにするのは非常に有効な対策となるのです。そこで、浴室などの天井に取り付けられる浴室暖房がオススメです。最近の浴室暖房は、乾燥機としても利用できる物がありますので、とても便利に使用できる住宅設備になるはずです。

トイレや脱衣所のヒートショック対策

トイレや脱衣所は暖房設備をつける方も少なく、ヒートショックの可能性が高い場所として有名です。したがって、浴室のヒートショック対策に合わせて、洗面脱衣所などにも気温差を無くす暖房機を設置するのがオススメです。
最近では、エコキュートメーカーなどとして有名なコロナ社が壁掛けで簡単に取り付けができる『ウォールヒート』などの小型暖房機を販売しています。こういったタイプであれば、設置場所にも困りませんし、安価にヒートショック対策が可能になるでしょう。また、トイレに関しては、便座の冷たさでヒートショックになってしまう危険があるとも言われていますので、温水洗浄便座機能付きのトイレを導入しておくのがオススメです。
なお、トイレや洗面脱衣所のヒートショック対策としては、コンセントを追加しておくだけでも効果的です。自由に使えるコンセントがあれば、持ち運びできるヒーターを冬場だけ設置することが可能ですので、とても便利になります。

リビングなどの暖房を床暖房にする

近年人気の暖房設備である『床暖房』ですが、これはヒートショック対策としてもオススメです。床暖房は、名称から分かるように、床を暖かく保つことにより暖を取る設備です。この暖房方式であれば、足元からじんわりと温まるため、室温はそれほど上げなくても快適に過ごすことができるのです。したがって、他の部屋との気温差が少なくなりますので、ヒートショックの危険性が軽減されると言われています。
可能であれば、リビングだけでなく、浴室やトイレなど、階全体に床暖房を導入するのが理想的です。

まとめ

今回は、近年社会問題ともなっているヒートショックについて、そのメカニズムやヒートショック対策を念頭に置いた家づくりについてご紹介してきました。ヒートショックというものは、本来安全なはずの家が、命に係わる事故を引き起こしてしまうものですので、きちんとその対策は考えておかなければならないのです。特に、冬場は部屋ごとに気温差があることなど当たり前という意識を持っている方も多いですし、「自分は大丈夫だ!」などと変な自信を持ってしまい、何の対策もとらない…という人も珍しくないのです。

しかし、気温差があれば血圧が上下してしまうのは誰もが同じことですので、ヒートショックは誰にとっても危険な症状だと考えなければいけません。したがって、家づくりをするときには、最初からヒートショック対策を考えて必要となる住宅設備選びなどを進めるのがオススメです。上述しているように、高齢化が進む日本では、今や交通事故よりもヒートショックによる死亡者の方が多いと言われる時代になってしまっているのです。この事実を忘れないようにしましょう。