初めての新築戸建て!後悔しないためにおさえておきたい屋根の基礎知識について!

今回は、これから新築戸建て住宅の購入をご検討中の方のため、一般の方が意外と見落としがちな『屋根の形』と『屋根材の種類』についてご紹介していきたいと思います。

戸建住宅の屋根というものは、その住宅の印象を大きく左右する重要な部位となります。最近では、洋風建築の様なスタイリッシュな外観デザインが好まれる傾向にあるため、住宅の屋根はデザインを重視して、その形や素材を選択するなど、住宅全体の見た目やコストの安さばかりに注目する方が多いです。しかし、本来屋根というものは、住宅を風や雨・日差しから守るためのものであり、中にいる人が快適に過ごすために非常に重要な役割を持っているのです。

さらに、屋根の形状や使用する屋根材によって必要になるメンテナンスや弱点なども違ってきますので、デザインやコストだけで選ぶのはあまりオススメできません。そこで今回は、戸建て住宅の代表的な屋根形状や屋根材の特徴などをご紹介しますので、自分が家を建てる時の参考にしてみてください!

屋根の重要性について

それではまず、戸建て住宅にとって『屋根』がどれほど重要なのかを簡単にご紹介しておきましょう。冒頭でご紹介したように、屋根の形は住宅デザインに大きな影響をあたえる部分となるため、見た目を重視してその形状や屋根材を選択する方がいます。もちろん、この選び方が悪いというわけではないのですが、長くその家に住むことを考えた場合、デザイン性だけではなく機能性やメンテナンス性もきちんと考えておくべきなのです。

そもそも屋根というものは、風雨や日差しから住宅を守るという非常大切な役割を持った部位なのです。そのため、選択する屋根形状や屋根材によって、雨漏りのしにくさや住宅内への熱の伝わりやすさなど、住宅の快適性に大きな影響をあたえるのです。
また、屋根に何らかの不具合が発生してしまい、雨漏りが起こってしまうと住宅内に水が侵入してしまいますので、木材が湿った状態になってしまいます。住宅の天敵であるシロアリは、湿った木材を好みますので、雨漏りを放置してしまうと、見えない位置でいつの間にかシロアリが大繁殖してしまう…など大問題に発展するのです。こういった事からも、住宅を建てる際に、できるだけ雨漏りしにくい屋根の形、屋根材を選ぶことが重要になるのです。

特に注文住宅の場合などは、内部の間取りの設計や住宅設備ばかりに注目して、屋根のことを後回しにする方が非常に多いです。その結果、雨や風に弱い屋根になってしまい、数年後に後悔してしまう…なんてことになる危険があるのです。憧れの戸建て住宅を建てる時には、屋根の形や材料についてもしっかりと調べて、何を導入するか検討すべきです。そうすることで、何十年も住めるより良いお家を建てることができるはずです。

日本の代表的な屋根形状とその特徴

それでは、日本国内の代表的な屋根形状とそれぞれの特徴についてご紹介していきましょう。日常生活の中では、あまり意識することが無いと思うのですが、一口に『屋根』と言ってもさまざまな形状が存在するのです。そして、選択する屋根の形によって得られるメリットや、注意しなければならない弱点が違ってきます。
ここでは、日本国内の代表的な屋根の形をご紹介しておきます。

切妻屋根

日本国内で最も一般的な屋根形状と言えば『切妻屋根』です。戸建て住宅のイラストとしてよく登場する、四角の上に三角形を描いた住宅がありますが、その三角部分が切妻屋根となります。「住宅の屋根をイメージしてください。」と言われて、ほとんどの方がイメージする屋根が切妻屋根だと思います。

切妻屋根は、非常に単純な構造をしているため、他の屋根と比較しても簡単に工事ができ、防水処理なども欠陥が少なくなるため、雨漏りトラブルが発生するリスクが低くなるのが大きなメリットです。中長期的に見ても、非常にメンテナンス性が良い形状と言え、住宅を維持するためのメンテナンスコストも抑えることができると思います。
ただし、下で紹介する寄棟と比較すると、屋根の妻側に軒が無いため、その側面の外壁に日射や風雨が当たりやすくなり、外壁の劣化速度が速くなってしまうというデメリットが存在します。また、非常に多くの住宅で採用されている屋根形状ですので、個性的な住宅デザインを望んでいる方には少し物足りなさを感じてしまう可能性もあるでしょう。

寄棟屋根

寄棟屋根も古くから日本国内でよく採用されているオーソドックスな屋根形状で皆さんもよく見かけると思います。寄棟屋根は、全方向に屋根面が構成されており、軒が外壁を覆い日射や風雨から守ってくれる形状となっています。基本的には、非常に耐風性も高く雨漏りリスクが低いと言われる屋根形状なのですが、棟が合流しY字になっている『かき合い』と呼ばれる部分の構造が複雑になってしまうため、この部分のメンテナンスを怠ると雨漏りが発生してしまいます。

寄棟屋根は、4方向から屋根が支えあうため、非常に高い耐風性を持っているのが大きなメリットです。台風の大型化が進んでいると言われている近年では、この寄棟屋根のメリットは非常にオススメ出来るポイントです。ただし、切妻屋根よりは複雑な構造になる箇所が出てきますので、定期的なメンテナンスは欠かせません。

片流れ屋根

片流れ屋根は、切妻屋根を半分に切ったような形状をした屋根です。この屋根形状は、南向きになるように設計すれば、太陽光発電の発電効率が非常に良くなると言う点や、シャープでスタイリッシュな外観イメージを実現できる点などが好まれ、近年非常に高い人気を誇ります。

屋根形状としては、一枚の板を屋根にのせるような形ですので、非常にシンプルな構造で施工性が良いため、新築業界では年々その需要が高まっています。しかし、片流れ屋根は、シンプルなのに関わらず、雨漏りリスクが非常に高くなってしまうというデメリットが存在します。実際に、ある瑕疵保険会社の調査では、新築雨漏り事故の約75%が『片流れ屋根』だったというデータもあるそうです。
片流れ屋根で雨漏りリスクが高くなるのは、一面に雨が集中してしまうことになるため、雨樋の負担が大きくなることや、けらばが長い事、強風時に横から当たる雨水の影響を受けやすくなることなどが原因です。

陸屋根

片流れ屋根と同じく、スタイリッシュな外観イメージを実現できると人気なのが『陸屋根』です。この屋根形状は、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造の家に良く採用される屋根と言えます。特徴としては、屋根に傾きが無い平面になっていることで、キューブ状のモダンな雰囲気のある外観デザインを実現することが可能です。

陸屋根は、屋根面が平面になっていることから、屋上スペースとして有効利用できるという他の屋根にはないメリットが存在しています。都市部などでは、庭のない住宅が増えているため、屋上として利用可能なこの形状は非常に大きなメリットになるでしょう。ただし、平面ですので、雨水が長くとどまることになってしまうため、屋上の防水処理の劣化が早く、メンテナンスを怠ると意外と簡単に雨漏りしてしまうというデメリットが存在します。

招き屋根

招き屋根は、「最も弱点が少ない」と言われており、近年非常に高い人気を誇る屋根の形になっています。この屋根は、切妻屋根の一方の屋根面の長く伸ばし、もう片方を短くした屋根形状を言えばわかりやすいでしょう。また、2面の屋根面は段違いになるように作られており、2面の屋根面が支えあうため、非常に頑丈で耐風性の高い屋根が実現できるのです。

メリットとしては、切妻屋根と同じく、シンプルで非常に施工性が高く、安価に施工できると言う点でしょう。さらに、屋根面が段違いに支えあうため、非常に高い耐風性を持っており、台風の多い日本の気候に適した形と言えます。さらに、屋根勾配が太陽光パネルの最も理想的な設置角度(約30°)に一致しているため、太陽光発電の設置にも適しています。
デメリットとしては、屋根面が段違いのため、外壁と屋根の接合部分の雨仕舞をしっかりと行わなければ雨漏りしてしまうなどと言った事が指摘されますが、屋根はどんな形状であれ、しっかりと雨仕舞をしなければいけないのです。そのため、これ以外に特別なデメリットが無い招き屋根は「最も弱点が少ない屋根形状」と言われているのです。

屋根に使用される屋根材の種類について

上述したように、一口に屋根と言っても、さまざまな形状が存在しており、どれを選択するのかによって得られるメリットと注意点が全く変わってしまうのです。もちろん、屋根形状は上に紹介したものが全てではなく、他にも存在しています。
さらに、住宅屋根の難しいところは、使用する屋根材にも種類があるということです。日本国内では、古くから『瓦』が愛されてきたため「屋根=瓦屋根」というイメージを持つ方が多いと思います。しかし、屋根材にもさまざまな種類が存在しており、近年の新築業界では、日本の伝統である瓦のシェアはかなり低くなっているのです。ここでは、さまざまある屋根材を簡単にご紹介しておきます。

金属屋根材(ガルバリウム鋼板)

金属屋根材と言えば、トタンをイメージする方も多いと思いますが、トタンは非常に耐久力が弱いという弱点がありますので、近年では一般住宅の屋根材として利用されることはほとんどありません。最近では、トタンに代わり、ガルバリウム鋼板と呼ばれる素材を利用した金属屋根材が登場しています。この屋根材は、金属なのにサビにも強く、高い耐久力を持っているのが特徴です。さらに、洋風建築によく合うスタイリッシュなデザイン性を持っており、年々需要が高くなっているのです。

さらに、金属屋根は他の屋根材と比較して、非常に軽量な屋根を実現できるというメリットがあります。屋根の重量が重くなってしまうと、建物の重心が高くなってしまうため、地震の揺れの影響を受けやすくなってしまうのです。そのため、住宅の耐震性向上を目的として、金属屋根材を採用するという方も多くなっています。

なお、ガルバリウム鋼板製屋根材に関しては、メーカー保証も25年程度と非常に長く、高い耐久力を持つことからメンテナンスフリーだと紹介されることもあります。しかし、非常に薄い金属板ですので、台風の強風などで飛んできたものが屋根に衝突した場合、凹みや傷が簡単についてしまいます。屋根材の表面に傷が入ると、そこからサビが広がってしまう可能性があるため、定期的な点検とメンテナンスは欠かせないのです。つまり、ガルバリウム鋼板を使用した金属屋根はメンテナンスフリーではありません。あくまでもメッキにより「サビにくい」だけで、「絶対にサビない」わけではないのです。

スレート屋根

現在、日本の新築業界で最も高いシェアを誇ると言われているのが、このスレート屋根です。ちなみに、カラーベストやコロニアルなどと呼ばれる屋根もスレート屋根です。この屋根材は、非常に豊富なカラーバリエーションやデザインが存在しています。また、高い施工性がありますので、安価に工事ができると言う点で人気になっているのです。さらに、非常に薄い板状に成形されており、瓦屋根と比較すると圧倒的に軽量な屋根を実現でき、建物の負担軽減や耐震性向上を目指せるというメリットがあるのです。

注意点としては、非常に薄い板状の屋根材のため、強度が弱いと言う点です。また、屋根材自身は防水性などの機能を何も持っておらず、表面の塗装により各種機能がもたらされています。したがって、スレート屋根を採用した場合には、7~10年程度に1度の頻度で再塗装のメンテナンスが必要になるなど、メンテナンスコストが割高になってしまいます。

粘土瓦

古くから日本国内で採用されてきた粘土瓦は、現在でも採用する方がいます。ちなみに粘土瓦は、釉薬瓦と無釉薬瓦という分け方があり、釉薬を塗って艶を出すかどうかで見た目がかなり変わります。
瓦の特徴は、非常に耐久力が高い点で、屋根材の塗装なども必要なく、メンテナンス性が良いと言われています。しかし、メンテナンスが必要ないのはあくまでも屋根材である『瓦』だけであり、瓦屋根全体でみるとメンテナンスフリーな訳ではありません。瓦屋根には、漆喰や木材などさまざまな副材が利用されており、それらは瓦ほどの耐久力はないのです。したがって、瓦屋根でも定期的な点検とメンテナンスは必要不可欠です。

注意点としては、瓦が非常に重量のある屋根材となってしまうため、建物はそれを支えるだけの強度が必要になるということです。そのため、建設コスト自体が他の屋根よりも割高になってしまうというデメリットがあります。

まとめ

今回は、戸建て住宅の購入を検討している方が知っておきたい、屋根形状や屋根材の基礎知識についてご紹介してきました。新築戸建て住宅を購入する際には、建物の外観デザインや間取り、導入する住宅設備には注目するものの、屋根の形状や屋根材の違いによるメリット・デメリットに関して、完全に無視してしまう方が多いです。

しかし、この記事でご紹介したように、選択する屋根形状や屋根材によって、住宅の雨漏りリスクや台風への強度、耐震性能などが変わってきてしまうのです。さらに、屋根材によっては必要になるメンテナンスなども異なってきますので、家を建てる時にはコストが抑えられても、10年、20年後には余計なメンテナンスコストばかりかかって損してしまった…なんて後悔してしまう人も少なく無いのです。
屋根は、中に住む人を風雨や日差しから守ってくれる部位ですので、しっかりと長期的な視点でその形状や屋根材を選ぶのがオススメですよ!