『ベタ基礎』『布基礎』って何?住宅の耐久性を左右する基礎について

今回は、これから家を建てようと考えている方のため、一般の方がほとんど気にすることが無いであろう『住宅基礎』について簡単にご紹介していきたいと思います。皆さんが、憧れの戸建て住宅を建てる時には、間取りや住宅デザインばかりに注目して建物の基礎部分を真剣に考えるようなことはほとんどないと思います。住宅基礎とは、地面と建物をつなぐ非常に重要な部分になるのですが、家が完成した後には目に入る部分ではないため、ほとんどの方が無視してしまいがちです。

しかし、地震などの自然災害が多い日本に暮らす限り、住宅の基礎は無視するわけにはいかない部分となるのです。住宅の基礎部分は、「家を支える」という非常に重要な役割を持っており、基礎によって住宅の耐久性が左右されると言っても過言でないほど重要なものなのです。そして、この住宅基礎には『ベタ基礎』と『布基礎』と呼ばれる2種類が存在するのですが、皆さんはそれぞれがどういったもので、どのようなメリットがあるのかなどほとんど知らないのではないでしょうか?
そこでこの記事では、『ベタ基礎』と『布基礎』がどういったものなのか、またどのようなメリット・デメリットがあるのかについてご紹介します。

『ベタ基礎』とは?

それではまず『ベタ基礎』の構造からご紹介していきましょう。ベタ基礎は、住宅の床面全体に鉄筋コンクリートを流し込んで作られる基礎のことです。立ち上がっている部分だけでなく、床全面にコンクリートが流し込まれ、一体化しますので、大きな面で家の重みを支えることが可能です。
ベタ基礎は、地盤が弱い場所に家を建てる際に採用されることが多く、大きな面で家を支えることになりますので、荷重が分散することになり、下で紹介する布基礎よりも耐震性が高くなるのが特長です。布基礎よりも鉄筋やコンクリートの使用量が多くなるのですが、阪神大震災以降はベタ基礎が採用されることが多くなっています。

『ベタ基礎』のメリット

それでは、ベタ基礎のメリットとはどのようなことが考えられるのでしょうか?上述したように、広い面で家を支えることができるため、荷重が分散し耐震性が高い住宅を造る事ができるというのが大きなメリットになるでしょう。その他にもいくつかのメリットがありますので、以下でまとめておきます。

  • 耐震性に優れる
    地震が多い日本では「耐震性に優れる」と言う点が非常に大きなメリットになります。また、住宅の荷重を分散させることができますので、不同沈下が起こりにくい基礎というのもメリットです。
  • 湿気が建物まで上がらない
    床下がコンクリートで覆われますので、地面から上がってくる湿気が建物に伝わりにくくなります。そのため、湿気による木材の腐食などのリスクが少なくなります。
  • シロアリ被害を防げる
    地面を厚いコンクリートが覆っていますので、湿気を防ぐことができるようになり、その結果シロアリの繁殖リスクも低下させることができます。

ベタ基礎には上記のようなメリットが存在します。

『ベタ基礎』のデメリット

上記のようなメリットがある一方で、デメリットも存在します。ベタ基礎のデメリットは以下のような事が指摘されています。

  • コストが高くなってしまう
    上述したように、布基礎と比較すると、鉄筋とコンクリートの使用量が多くなるため、その分コストが高くなってしまいます。
  • 鉄筋の量によって強度が変わる
    ベタ基礎のメリットは、床全面が鉄筋コンクリートに覆われることで耐震性が高くなると説明しましたね。しかし、この強度はコンクリート内の鉄筋の数によって変わってしまうのです。したがって、「ベタ基礎だから自分の家は強い!」と思っていても、コスト削減などを目的に鉄筋量を減らした場合、想像よりも脆い…なんてことになってしまう場合があります。鉄筋を多くすれば強度は高くなりますが、その分、材料費がかかります。

『布基礎』とは?

それでは次に『布基礎』の構造についてです。布基礎の場合は、逆T字型のコンクリートを地面の奥深くまで打ち込み家を支える基礎となります。一見すると、布基礎の場合も床がコンクリートに覆われていますので、ベタ基礎と同じように見えるのですが、布基礎の場合は地面から立ち上がっている部分のみで家を支えることになるのです。鉄筋も、立ち上がり部分のみに入っていますので、面で支えるベタ基礎に対して『点』で支える構造となります。
布基礎は、立ち上がり部分以外の地面に湿気が上がってこないようにするため防水シートを敷き、その上に薄くコンクリートを施工します。ベタ基礎は、この床全面のコンクリーが15cmほどの厚さを持つのに対し、布基礎の場合は5~6cmの厚みしかありません。

『布基礎』のメリット

それでは、点で支える『布基礎』のメリットをご紹介しましょう。ベタ基礎と比較すれば、床全面に鉄筋を使用しないことや、コンクリートが薄くなるため、材料費が抑えられるのが大きなメリットになります。

  • コストを抑えることができる
    使用する鉄筋とコンクリートの量が少なくなりますので、その分コストを抑えることが可能です。
  • ポイントによっては高い強度を誇る
    布基礎は、地面奥深くまで基礎とを打ち込みますので、ポイントによってはベタ基礎よりも高い強度を誇ります。

『布基礎』のデメリット

コストが抑えられる布基礎ですが、その分ベタ基礎と比較した場合のデメリットが多くなります。

  • 耐震性能が劣る
    最も大きなデメリットは、ベタ基礎よりも耐震性が劣ってしまうと言う点です。面で支え荷重を分散できるベタ基礎に対し、点で支えることになるため、どうしても耐震性は劣ってしまうのです。
  • 湿気、シロアリリスクが高くなる
    布基礎の場合、地面の湿気が建物に伝わりやすくなりますので、木材の腐食やシロアリの繁殖リスクが高くなってしまいます。湿気対策などとして、床下に通気口を作ると冬場は冷たい空気が入ってきてしまい、床冷えなどの問題も生じる可能性があります。

『ベタ基礎』と『布基礎』はどっちが良いの?

ここまでの説明で、『ベタ基礎』と『布基礎』それぞれの構造やメリットなどがわかっていただけたと思います。ここで皆さんが気になるのは「結局のところ、家を造るならベタ基礎と布基礎ならどっちが良いの?」ということではないでしょうか?
それぞれの構造を知った上で選択するのであれば、「耐震性が高いベタ基礎の方が良いのかな?」と考えてしまう方がほとんどだと思います。しかし、この2種類の基礎に関しては、家を建てる地域の気候やそのほかの面なども総合的に比較して選ぶべきで、単純にどっちが良いとは一概に言えないのが実情なのです。
以下でさまざまな面で比較しておきたいと思います。

コストに関する比較

家を建てる時には多額のコストがかかってしまいますので、削減できる部分は削減したいと考える物でしょう。一般的に、ベタ基礎と布基礎を比較した場合、材料が少なくて済む布基礎の方が有利になります。ただし、実際の施工に関しては、ベタ基礎と布基礎でそこまで大きな違いはなくなっていると言われています。ベタ基礎が普及し始めた頃であれば、施工費用も布基礎より高かったのですが、普及が進むにつれて、ベタ基礎作りに慣れてきて施工費用が下がってきています。そのため、現在では材料費の違いだけしかなく、約30坪(100㎡)の基礎で10万円程度の違いしかないと言われています。

工期に関する比較

次の比較ポイントは、家を建てる時の工期についてです。ベタ基礎は床全面に鉄筋を組み、コンクリートを打たなければならないため、布基礎よりもかなり工期が長くなりそう…と考えてしまう人も多いことでしょう。
しかし実際には、ベタ基礎と布基礎、どちらで基礎をつくるにしても、工程や工期のそこまで大きな違いはありません。

耐震性に関する比較

ベタ基礎のメリットが耐震性が高くなることだとご紹介しましたね。これは、床全面で建物を支えることになるため、荷重が分散し地震の揺れに強くなるということなのです。
こう聞くと、布基礎は耐震性に問題があると感じるかもしれませんが、そうではありません。布基礎を採用する場合でも、耐震性を高くするため、立ち上がり部分の底盤を広くする、地盤を強くする等、耐震性を高める方法はいくらでもありますので、そこまで心配する必要はないのです。逆に言えば、ベタ基礎であっても、鉄筋の量を減らせば耐震性は低くなってしまうものです。
住宅の耐震性能は、基礎のみで決まるものではありませんので、住宅全体で耐震性を高めるように考えるようにしましょう。

地域に関する比較

一般的に、寒冷地などで家を建てる場合には、布基礎の方が良いとされています。冬場は極端に気温が下がるような寒冷地は、気温が低い日に地面が一定の深さまで凍結してしまい、凍結による膨張で基礎部分を押し上げてしまうことになるのです。そのため、寒冷地では「凍結深度」というものが行政によって定められており、決められた深度よりも深い位置に基礎と作らなければいけません。
つまり、ベタ基礎の場合は、床面全面を掘り下げなければならないため、大量の残土が生じてしまい、施工費が高くなってしまうのです。したがって、点で基礎を設置できる布基礎の方がコストパフォーマンスが良くなるのです。

まとめ

今回は、家を建てる際にはぜひ知っておきたい住宅基礎の知識についてご紹介してきました、住宅の基礎には大きく分けて『ベタ基礎』と『布基礎』と呼ばれる手法があり、それぞれに異なるメリットとデメリットが存在するのです。この記事でもご紹介したように、一般的にはベタ基礎の方が耐震性が高くなることから、阪神大震災以降はベタ基礎が選ばれることが増えています。しかし、対策次第では布基礎でも耐震性能を高めることができますし、家を建てる地域の気候条件によっては布基礎の方がコストを抑えることができるのです。

したがって、家を建てる時には、予算や地域性も含めてしっかりと基礎について検討するべきだと覚えておきましょう。