最近よく耳にする『バリアフリー住宅』とは?新築時にバリアフリーを意識することのメリット

「少子高齢化」や「超高齢化社会」という言語が、大手メディアなどからも盛んに聞こえてくる現在の日本では、多くの時間を過ごすことになる自宅のバリアフリー化が注目されるようになっています。バリアフリーと聞けば、公共交通機関の駅や大手宿泊施設など、さまざまな人が利用する場所で、誰もが快適に行き来できるようにと考えて行われる工夫ですね。不特定多数の人が使用する施設であれば、今の時代バリアフリー化が必要だと言われるのは当たり前と考えられますが、自宅になると「本当に必要なの?」「まだまだ動けるし!」と考えてしまう方も少なくないでしょう。

もちろん、現在も親世代と一緒に暮らしているといった二世帯住宅であれば、最初からバリアフリーに注目するのは理解できますが、高齢者と一緒に住んでいるわけではないというご家庭なら、家を建てる時にバリアフリーのことなんか考えていない…という方も多いと思います。しかし、家というものは、そこで何十年も過ごしていくことが予想されるのですし、自分たちが年を取った時のことも考えて建てておくのがオススメです。特に最近の住宅は、きちんと手入れしていれば、本当に長持ちしますし、何も考えないで建ててしまうと、将来多額のコストをかけてリフォームしなくてはいけなくなるかもです。

そこでこの記事では、バリアフリー住宅の基礎知識や、実際にバリアフリーに注目して家を建てる時のメリットと注意点をご紹介します。

そもそもバリアフリー住宅とは?

現在では、不特定多数の方が使用する公共施設などでは「バリアフリー」がスタンダードになっていると言えるでしょう。しかし、一般住宅における「バリアフリー」となると、具体的にどのような工夫がなされていればバリアフリー住宅と呼ばれるのかいまいちイメージできない…という方も多いのではないでしょうか。そこでまず、近年住宅業界でもよく耳にするようになってきた『バリアフリー住宅』の基礎知識を身に着けておきましょう。

バリアフリー住宅は高齢者だけに優しいわけじゃない!

「バリアフリー」というのは、もともと建築用語で、「バリア(障壁)」を「フリー(のぞく)」という意味の造語です。これはつまり、生活上の障壁となる物を取り除き、誰もが生活をしやすくするということを意味しています。近年、新築業界などでも注目されているバリアフリー住宅は、高齢者や障がい者などはもちろん、そこに住む全ての人が生活する時、支障となる課題が取り除かれている住宅のことを指しています。

一般的には、「バリアフリー」というものは、高齢者や何らかの障害を抱えた人向けのものだと考えられていますが、実は全ての人にとっての「バリア(障壁)」を取り払うことを意味しているのです。つまり、家を建てる時、そこに住むのが若い夫婦や子供だけという場合でも、より快適に暮らしていくために障害を取り除いた設計をすれば、それはバリアフリー住宅と言えます。

ちなみに、バリアフリーと並んで、近年の住宅業界でよく聞く言葉に『ユニバーサルデザイン』というものが存在します。この二つは、しばしば同じ意味合いで使われているのですが、若干の意味の違いは存在しますので、それぞれの意味をきちんと押さえておきましょう。

  • バリアフリーの意味
    バリアフリーは、段差をなくすことや、手すりを設置するなどといった工夫で、生活上の障害となる事柄を取り除いていくことを意味しています。住宅以外では、道路の点字や、交差点やエレベーターの音声案内などもバリアフリー対策の一つです。
  • ユニバーサルデザインの意味
    ユニバーサルデザインは、全ての人にとって「障害のない設計」を最初からすることを意味しています。住宅に関して言えば、子供やお年寄りでも使いやすくなるドラム式洗濯機の導入、階段の勾配を緩くする、トイレを広くとるなどがユニバーサルデザインの一例です。

バリアフリーとユニバーサルデザインは、微妙に意味合いが異なりますので、しっかりと覚えておきましょう。なお、人によっては「バリアフリー=高齢者・障がい者を対象とした取り組み」、「ユニバーサルデザイン=全ての人を対象とした取り組み」と言った感じの分け方で使っている人もいます。

バリアフリー住宅の特徴について

バリアフリー住宅は、生活を進めるうえでの「バリア(障壁)」を取り払う工夫がなされた住宅です。例えば、スロープを付けて段差をなくした玄関だとか、廊下に手すりをつけておくなどと言った工夫がバリアフリーとイメージする方が多いと思います。しかし、バリアフリー住宅には、これら以外にも無数の工夫が存在します。ここでは、バリアフリー住宅に施される工夫をいくつかご紹介しておきます。

  • 住宅内の段差が取り除かれている
  • 車いすでも移動しやすいスペースが確保できている
  • よく利用する部屋がワンフロアにまとめられている
  • 滑りにくい床材が採用されている
  • 各所に手すりが設置されている
  • 低い位置に収納がある
  • 安全装置付きの設備が導入されている

上記の工夫はあくまでも一例です。バリアフリー住宅を建てる時には、家族構成や実際に使用する方の体の状態などを考慮して最適な設計を行うようになります。現在の家族構成に最適なニーズや、将来的なニーズを考えて設計する必要があると考えてください。

バリアフリー住宅にするメリット

バリアフリー住宅の基礎がわかったところで、実際に家を建てる際に、バリアフリー住宅を選ぶことで得られるメリットをご紹介していきましょう。

高齢者の転倒事故を予防できる

バリアフリー住宅のメリットとしては、やはり、高齢者が一緒に住んでいる場合、転倒事故のリスクが少なくなるという点でしょう。

誰でも年を取るものですが、高齢になると筋力が衰えてしまうため、ちょっとした段差や床が濡れていることなどで、転んでしまうことがあるのです。そして、骨なども弱っていることから、転倒した際に骨折してしまう…、頭を強く打ち付けて障害が残る…など、大事故になってしまう恐れがあります。家の中でも、特に玄関や浴室、トイレや階段などは転倒事故が起きやすいと言われています。

したがって、こういった場所に手すりを設けたり、滑りにくい床材を導入するなど、バリアフリー化しておけば、筋力が衰えた高齢者でも安心して生活ができるようになります。

車いすの家族がいても生活しやすい

バリアフリー住宅は、車いすの方も移動しやすい設計をすることが可能です。思わぬ事故や病気などで、車いす生活になってしまう可能性は誰にでもあります。したがって、新築時から車いすでの生活にも対応しておくということを考えておけば、万一家族の誰かが車いすで生活することになった場合、本人もその介助者にとっても最低限の負担で生活が進められるようになるはずです。

バリアフリー住宅は、将来どのような状況になっても、家族が安心して生活できるようになるという、非常に大きなメリットが得られます。

長期的に住みやすい家になる

バリアフリー住宅は、日常生活の中にある「バリア(障壁)」を取り払う工夫がなされた家です。そのため、新築時にバリアフリー住宅を意識しておけば、家族全員が将来も快適に過ごせる家にすることができるわけです。まだ若い夫婦であっても、段差を無くするような工夫をしておけば、子供が生まれても転倒のリスクを減らすことができるでしょう。もちろん、将来自分たちが高齢者になった時も、住み替えや多額のお金をかけてバリアフリーリフォームする必要なく、快適に生活ができるようになります。

このように、現在家族に高齢者や小さな子供がいなくても、将来的に誰もがバリアフリーが必要になると考えられるのです。「バリアフリーが必要になったら住み替えする!」と心に決めている方は良いかもしれませんが、思わぬ事故ですぐに必要になることもありますし、新築の段階でバリアフリー対応にしておくことは、家族全員が安心できるというメリットがあります。

バリアフリー住宅を建てる時に押さえておきたいポイント

それでは最後に、実際にバリアフリー住宅を建てようと考えている方に向け、今のうちから押さえておきたいいくつかのポイントをご紹介しておきます。

場所別にバリアフリー化のポイントを押さえて!

バリアフリー住宅を建てたいと思った時でも、どの部分をどのようにすれば良いのか分からない…という方も多いですよね。ここでは、住宅の場所別にバリアフリー化のポイントをご紹介しておきます。

  • 玄関のバリアフリー
    住宅の中でも、特にバリアフリー対策をしておきたいのが玄関です。家を出入りする際に必ず通る場所ですので、車いすなどでも通りやすいよう設計しましょう。具体的には、車いすでも出入りしやすいよう、75cm以上の幅を確保する、玄関ドアは引き戸タイプを選ぶ、上がり框(かまち)の段差は低めにする、玄関スロープを設けるなどで、誰でも安心して移動できるようになります。
  • リビングのバリアフリー
    家の中でも滞在時間が長いリビングもバリアフリーの優先順位が高いです。実際に、内閣府の調査によると、高齢者の自宅内における転倒事故は、庭に次いでリビングが多いという結果になっていたそうです。
    リビングは、滑りやすい床材になっていたり、カーペットで段差ができていたり、意外と転倒しやすいポイントが多いのです。バリアフリー化する場合には、こういった段差や滑りやすさを解消するような設計を行いましょう。なお、リビングテーブルは、70cmの高さだと車いすがそのまま入れるそうですので、その辺りの家具のことも慎重に検討しておけばより快適なリビングになるはずです。
  • 浴室のバリアフリー
    浴室も、高齢者の転倒事故が多いというイメージが高いですよね。意外に多いのが、浴槽に入ろうとして、足が上がりきらずに転倒してしまう…なんてことがあるそうですので、またぎやすい高さ(40cm以下)にするのを意識しましょう。また、バスタブや床材は滑りにくい素材にするとよいでしょう。浴室は、高齢者の方でも安全に入浴できるよう、段差を減らし、各所に手すりをつける工夫をしておきましょう。なお、日本国内で高齢者の死亡事故が非常に多いヒートショックについても、浴室暖房などで対策しておきましょう。

バリアフリー住宅は、他にもさまざまなポイントが存在します。例えば、車いすの方でも使いやすいよう、キッチンの高さ設定をよく考えるだとか、転倒しにくい廊下、誰でも使いやすい洗面台など、注意すべきポイントは意外に多いのです。
ただし、バリアフリー化するポイントは、家族構成などによっても変わってきますので、その辺りは不動産会社や設計士の方と慎重に打ち合わせを行っておきましょう。

参照データ:内閣府調査より

補助金や減税制度を有効活用しよう!

最後は、注意点というよりは、知っておかなければ損をするかもしれないポイントについてです。少子高齢化が進む日本では、自宅のバリアフリー化に対して、政府がさまざまな支援をしてくれる制度を作っています。もちろん、何でもかんでも支援してくれるのではなく、いくつかの条件を満たさなければいけないのですが、満たしているのに知らないから申請しなければ、損をしてしまいますよね。そこで、簡単に、住宅のバリアフリー化に利用できる助成制度をいくつかご紹介しておきます。

  • 高齢者住宅改修費用助成制度
    これは、バリアリフォーム化に関する助成金です。助成される支給限度基準額は20万円となっており、工事費用の最大9割を限度額として助成を受けることができます。
  • 長期優良住宅化リフォーム推進事業
    これは、国土交通省が支給している「住宅の質を高めて住みやすい環境を整備する」ための補助金です。耐震工事や省エネリフォームのための補助金と考えられがちですが、同時にバリアフリー工事を施すことで工事の費用負担を軽減できます。
  • 住宅特定改修特別税額控除
    バリアフリー改修工事をした人を対象に、一定の金額をその年の所得税から控除する制度です。

上記以外にも、各自治体が独自で行っている補助金などもありますので、一度役所などに問い合わせてみると良いでしょう。

まとめ

今回は、少子高齢化が社会問題となっている日本において、住宅業界でも注目されるようになった『バリアフリー』の基礎知識について解説してきました。バリアフリーは、高齢者や障害を持つ方のために行われる工夫と考えられがちなのですが、そういうわけではなく、生活上の障壁となる物を取り除き、全ての人が生活をしやすくするということを意味しています。

つまり、まだ若い夫婦が家を建てる時でも、バリアフリーに注目するということは何らおかしい事ではなく、必ず年を取るということを考えると、当たり前のことだと言えるはずです。ただ、若い人であれば、日常生活の中で段差や手すりが無いことに不便…と感じた経験が少ないことから、「住宅のバリアフリー化」と言われても、具体的に何をすれば良いのかイメージできない…という方も多いようです。

バリアフリー住宅やユニバーサルデザインというものに興味があるけれど、「具体的にどこに注目すれば良いの?」という方がいれば、お気軽に弊社までお問い合わせいただければと思います。

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