いまいちよくわからない相続税について!相続税が非課税になる財産とは?

私たちは、普通に日常生活を送っているだけでさまざまな税金を支払うことになります。最も身近で分かりやすい税で言えば、消費税と言うものがあり、消費税はコンビニやスーパーなどで買い物をする際に自動的に課せられて、特に意識することもなく支払っているという方が多いですよね。

消費税に関しては、「息をするのと同じように当たり前のごとく支払う」というような感じになっていますが、税金の中にはその仕組みを詳しく知っておかなければ大きな損をしてしまう…と言うようなものがあります。その最たる例が、相続税や贈与税と呼ばれるもので、親から子へ財産が引き継がれる際、かなりの額の税金を支払わなければならない制度となっています。

正直な話、親が頑張って作った財産を子に引き継ぐという行為に税金を課せられるという事実には、何となくモヤモヤしてしまうものですが、ここに文句をいっても始まらないので、どうすれば節税ができるのかをきちんと考えて対策をおこなっておく方がよほど賢い行為と言えるでしょう。実際に近年では、相続税対策として、現金を不動産に変えて引き継いでいくといった手法などが注目されています。
この記事では、こういった相続税対策と少し異なるのですが、皆さんが覚えておきたい「相続税が非課税」になるケースについて簡単にご紹介していきます。相続税は、正しい知識を持っているか否かで、支払わなければならい税額が大きく変わってきますので、この記事の内容は頭に入れておきましょう。

相続税の役割についてはコチラ

相続税が非課税となるケースとは?

それではまず、相続税が非課税になるケースをご紹介していきましょう。相続税は「資産の再分配を図る」と言う役割りを持っているとされているのですが、何でもかんでも相続税を課せられるというわけではなく、以下の2つケースは非課税となります。

  • ①相続税の非課税財産
  • ②相続税の計算上で非課税となるもの

①と②については、どちらも相続税が非課税となるのですが、「相続・遺贈で取得するものか、それとも課税の基準額や税額から差し引くものなのか」という違いが存在しています。

例えば、①で言えばお墓や仏壇、生命保険や死亡退職金などと言った特例に定められている財産が対象となります。その一方、②に関しては、課税基準となる財産額や相続税の金額から一定額を差し引くという制度があることで、相続税が非課税になるというものです。相続税は、相続した財産の価額から基礎控除といわれる一定の額を控除して計算されるもので、基礎控除以下の財産であれば非課税になるわけですね。このほかににも、配偶者の税額軽減などと言う制度も存在します。

なおこの記事では、①に該当する『非課税財産』の種類を詳しくご紹介していきます。

相続税の非課税財産について

それでは、相続税の非課税財産についてもう少し詳しくご紹介しておきましょう。

①墓地や仏壇など日常礼拝をしている物

国税庁のサイトでは以下のように定義されています。

墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
引用:国税庁

要は、宗教的な財産で、法事やお彼岸などで定期的にお参りする墓地や、毎日手を合わせたりするような仏壇に関しては相続税が課されることはありません。以下に例を挙げておきましょう。

  • 墓地、墓石
  • 庭内神し(屋敷内にある神の社や祠など、不動尊などご神体を祀っているもの)
  • 仏壇、仏具、仏像
  • 神棚、神体、神具
  • 位牌
  • 霊廟、古墳など

注意が必要なのは、このケースで非課税になる財産は「日常礼拝のために必要なもの」と明らかに認められるもので、そういったものであれば、財産がある敷地や付属設備なども非課税の対象となります。しかし、何でもかんでも非課税になるのかと言うとそういうわけではなく、宗教的な財産であっても、投資用や趣味用・売買用の骨とう品などであれば相続税の課税対象となります。
ちなみに、お墓や仏壇を購入するにあたり、ローンを組んでいた場合でも、その借金に関しては相続税を計算する際の債務控除にすることはできません。

②相続人の取得した生命保険や退職手当などの一部

人がなくなった時には、生命保険に加入していれば、遺族に生命保険が支払われたり、故人が勤めていた企業から退職金が遺族に支払われたりします。そして、こういった「人の死を機に受け取るお金」に関しては、相続人が受け取る生命保険金や死亡退職金は、「500万円×法定相続人の人数」の金額までが非課税財産と決められています。また、弔慰金が支払われる場合には、被相続人の死亡が業務上の死亡である場合「被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額」、業務上の死亡ではない場合「半年分に相当する額」までが非課税財産とされています。

こういった「人の死を機に受け取るお金」は、本来相続税法上「相続財産であり相続税がかかる」という認識のものなのですが、同時に遺族のその後の生活を考えると、必要不可欠なお金とも考えられます。そのため、相続税法では「500万円×法定相続人の数」という非課税枠を設けているわけですね。以下で、このケースについてもう少し詳しく条件をご紹介しておきます。

死亡保険金について

死亡保険金は、以下の要件をすべて満たした生命保険のことです。

  • 保険料負担者が被相続人である
  • 被保険者が被相続人である
  • 保険金の受取人が生きている

死亡保険金も本来は相続財産とみなされるのですが、上記の要件を満たしていれば「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。

死亡退職金について

死亡退職金は、故人の勤務先から遺族が貰う退職金のことを指しています。本来、故人が受け取るべきものなのですが、死亡したため遺族が受け取れるというものです。なお、死亡退職金は、「死亡日以後3年以内に支給が確定した」退職金で、本来は相続税の対象となります。

ただしこちらも、被相続人の死後、遺族の生活のために必要なお金とみなされ、「500万円×法定相続人の数」まで非課税となります。

注意点について

死亡保険金や死亡退職金について、法定相続人の数については「相続放棄をした人も含める」と言う点に注意しておきましょう。こういったケースで、非課税枠の計算を行う場合、法定相続人は民法上の相続人とされているのですが、以下の要件もあるのです。

  • 死亡・欠格・廃除した相続人は含めない
  • 代襲相続した人は法定相続人になる
  • 相続放棄をした人も法定相続人に含める
  • 養子は他に実子がいるなら1人まで、いないなら2人までカウントできる

上記の要件の中で特に注目したいのが「相続放棄をした人も法定相続人に含める」と言う部分です。本来、相続放棄というのは「最初から相続の権利がなかった」とみなす行為なのですが、この場合は、法定相続人に含まれますので、きちんと数に入れて計算をしましょう。
ただし、非課税になるのはあくまでも「財産を相続する相続人のみ」となります。例えば、相続権が無い孫などが死亡保険金を受け取った場合、非課税枠が使えませんし、相続放棄をした人も非課税の適用を受けることはできません。このことから、「法定相続人の数に含める」ことと「非課税枠を利用できる」ことは別物だという点は注意しなければいけません。

③公益法人などへの寄付

この部分に関しては、国税庁のサイトで以下のように説明されています。

相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
引用:国税庁

簡単に言うと、財産を相続したとしても、その財産を国や地方自治体、公益法人や認定NPO法人などに寄付する場合には、相続税が非課税になりますよと言うものです。ただし、このケースでもいくつかの条件を満たさなければいけません。

  • ①寄附する財産は相続や遺贈で取得したものである
    上述した、死亡保険金や死亡退職金も含まれます。
  • ②相続税の申告期限までに財産を寄付する
    申告期限は相続開始を知った日から10か月以内です。
  • ③相続税の申告書に寄附した財産の明細書や証明書類を添付する

注意点としては、公益法人であれば、どこに寄付しても構わないという訳ではなく、非課税対象になるのは「租税特別措置法施行令第40条の3に規定されている法人」に寄付した場合のみです。
また、公益法人に相続財産を寄付する場合、寄附した後の財産の使い道や使用時期などにも条件があります。寄付を受けた法人は、その財産を公益目的の事業や特定非営利活動に使わなければいけませんし、寄付を受けた日から2年以内に使用していなければ非課税にならないと定められています。なお、寄付できる財産は、不動産や株式なども含まれるのですが、この場合は譲渡所得に課税されますので、所得税を非課税にするために別の手続きが必要になります。もちろん、寄付される法人としても、現金であれば何の問題もないのでしょうが、不動産や株式になると、その取扱いに困ってしまうケースがあるので、事前に話し合いが必要になると考えておきましょう。

まとめ

今回は、誰もが知っておきたい相続税の非課税枠について簡単にご紹介してきました。相続税は、親が子に財産を残すときに課せられる税金ですので、それなりに大きな金額になってしまいがちです。そのため、生きているうちにさまざまな対策をおこなっている方が多いのですが、それに合わせて相続税を軽減するための手段もきちんと理解しておくと良いでしょう。

ただ、「何が非課税対象と出来るのか?」「どういった手続きをすれば良いのか?」などに関しては、一般の方が自分で全て行うことなどほぼ不可能だと思っておいた方が良いですよ。こういった税金の手続きに関しては、専門家に相談するのが最も安心で、効果的な節税対策ができるはずです。