新築購入でアレルギーが…シックハウス症候群の基礎知識と対策について

住宅周りに存在するアレルギー反応である『シックハウス症候群』は、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?特に、新築住宅を購入し、そこで住み始めた時にアレルギー反応が出てしまう…と言った事例が多いようで、新築住宅特有の問題と考えている方も多いようです。

確かに、新築住宅はシックハウス症候群を発症し得る原因がたくさん潜んでいるのですが、この問題は新築住宅だからと言って必ず症状で出てしまう…という問題でもありません。実際に、家族で新居に引っ越して生活し始めたところ、子供だけアレルギーが…奥さんだけアレルギー症状が…と言った感じで、同じ家に住んでいるのに症状が出る人と出ない人に分かれてしまうことがほとんどなのです。さらに、賃貸住宅などの引っ越しなど、新築ではない既存住宅でもシックハウス症候群の症状が出てしまう人がいます。

こう聞くと、「シックハウス症候群は運が悪い人に起こるものなのかな?」とその原因は不確かと感じてしまうものですよね。当然そのようなことはなく、シックハウス症候群は、明確な原因がありますので、何が原因で引き起こされるのかをきちんと知識として持っておけば、対策を立てる事ができるはずです。そこでこの記事では、新築に引っ越す際に押さえておきたい、シックハウス症候群対策をご紹介します。

シックハウス症候群ってなんだ?

それではまず、そもそもシックハウス症候群がどのようなものなのかについて、その基礎知識をご紹介していきましょう。厚生労働省によると、シックハウス症候群については、「医学的に確立した単一の疾患ではなく、居住に由来する様々な健康障害の総称を意味する用語」という位置づけをしているようです。そして、シックハウス症候群のことを以下のように定義づけています。

近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまです。
引用:厚生労働省「シックハウス症候群対策のページ

近年の新築業界では『高気密・高断熱』がキーワードになっているのですが、気密性が非常に高くなっていることから、建材から吐き出される化学物質が室内にとどまってしまい、それが人体に悪影響を出すといった感じのものですね。それでは、建材から発生する化学物質による空気汚染については、何が原因物質となっているのでしょうか?

シックハウス症候群の原因物質

シックハウス症候群の原因物質については、厚生労働省が、以下のような物質だと公表しています。

住宅の高気密化・高断熱化などが進み、化学物質による空気汚染が起こりやすくなっているほか、湿度が高いと細菌、カビ、ダニが繁殖しやすくなります。それだけではなく、一般的な石油ストーブやガスストーブからも一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質が放出されます。たばこの煙にも有害な化学物質が含まれています。シックハウス症候群は、それらが原因で起こる症状です。
引用:厚生労働省「シックハウス症候群対策のページ」 

シックハウス症候群の主な原因物質は、化学物質やカビ・ダニだとされています。家を建てる時には、さまざまな化学物質が含まれた建材を使用しますし、さらに、室内に配置する家具やカーテンなどにも化学物質が含まれています。新築であれば、まだカビなどは発生していないと考えられますが、家そのものや生活のために使用する家具がシックハウス症候群を引き起こしているわけです。さらに、長年住んでいけば、カビやダニが発生してしまうことになるため、新築住宅だけの問題ではなく、既存住宅でも発症してしまうのです。

シックハウス症候群については、「最近になってよく耳にするようになった…」と感じる方が多く、若い人の生活習慣などに原因があると考えてしまう方もいます。しかし、シックハウス症候群が注目されてきたのは、家の性能が向上してきたというのが大きな要因です。日本の伝統である木造住宅と言うものは、ふすまや障子、畳に土の壁と言った物が採用されていて、家そのものの通気性が非常に良い造りと言う特徴があります。これが近年では、「高気密・高断熱」がキーワードになっており、どんどん住宅の気密性と断熱性が向上してきたのです。

機密性が高い住宅は、断熱性に優れていて、外気の影響を受けにくく、一年中快適な室内空間を保ってくれるというメリットがあります。しかしその一方で、空気の自然換気が行われにくくなり、ダニやカビの胞子などが室内に留まるなど、空気環境の悪化を招いてしまう訳です。つまり、こういった空気環境の悪化で、シックハウス症候群を発症する方が目立つようになったわけですね。

なお、シックハウス症候群は、原因物質が人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応してしまう人もいます。

シックハウス症候群の症状

シックハウス症候群の症状についても個人差がかなり大きいと言われています。そもそも、シックハウス症候群については、どのようなメカニズムで発症しているのかが、まだ十分に解明されていないと言われている状況です。一般的には、以下のような症状が出ると言われています。

  • 目のかゆみ
  • 鼻水が出る
  • 喉の乾燥
  • じんましん
  • めまい
  • 吐き気(嘔吐)
  • 頭痛
  • 倦怠感

このように、シックハウス症候群の症状については、他の動物アレルギーなどと似ています。例えば、新築に引っ越して、上記のような症状が出た場合、ペットを新たに迎えたなどの生活習慣の変更が特になければ、シックハウス症候群を疑いましょう。

新築でシックハウス症候群を起こさないためには?

シックハウス症候群は、基本的に生活環境を変えたことで発症するという方が多いです。例えば、新築を購入してそこに引っ越したことで、上述したような症状が出てしまう訳です。

したがって、せっかく購入したマイホームで、シックハウス症候群などにならないためには、入居前にきちんと対策を施しておくのが大切です。ここでは、新築に入居する前に行っておきたいシックハウス症候群対策をご紹介しておきます。

入居前にしっかりと換気する

厚生労働省の資料でも記載されていますが、シックハウス症候群は、住宅の気密性が高くなったことで、建材から吐き出される化学物質が室内にこもってしまい、その悪化した空気環境下で人が生活することで発症するとされています。
つまり、新築一戸建て購入後、実際に生活を始める前には、各部屋の窓をあけて、しっかりと換気をしておくことが大切になるのです。もちろん、入居前日などに一度換気しただけでは意味はなく。入居後しばらくの間は、毎日窓を開けて換気するように心がけましょう。

カビ・ダニ対策

カビやダニは、人にさまざまあな悪影響を与えるものです。そしてシックハウス症候群の原因物質でもあるので、可能な限りカビ・ダニが繁殖しないよう、日々の湿度管理を行っていきましょう。
また、家中の掃除は小まめに行い、アレルギーや皮膚炎などを起こすダニやその死骸、ふんなどもしっかりと除去するようにしてください。
なお、既存住宅で発生するシックハウス症候群は、エアコンのメンテナンス不足が原因となるケースが多いです。エアコンは、シーズン前にフィルターの掃除する程度の方が多いのですが、そのような簡易のメンテナンスでは、内部にカビが大量発生してしまっている可能性があります。そして、エアコンを使用した時に、風にカビが含まれていてシックハウス症候群を引き起こすわけです。エアコンは、定期的に専門業者に清掃を依頼するなど、しっかりとメンテナンスをしなければいけないと考えてください。

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寝具などの対策について

家族が毎日使用する寝具などについて、きちんと日干しをしているでしょうか?最近では、テレビCMなどで、消臭スプレーをかけておけば、布団を丸ごと洗濯できるといった表現がされているため、布団を外に干す習慣が全くない人も多くなっています。はっきり言っておきますが、スプレーだけで布団が綺麗になるようなことはありませんよ。
日光には殺菌や乾燥の効果がありますので、家族が使用する布団などは、定期的に日干しすると良いでしょう。そうすることで、カビやダニの繁殖を抑えてくれます。さらに、カーペットや畳などに関しても、定期的な日干しがシックハウス症候群対策として有効です。

まとめ

今回は、住宅が高性能化している中で、多くの方を悩ませるようになっているシックハウス症候群について解説してきました。シックハウス症候群は、家を建てるために使用する建材や、日常生活で使用する家具などに含まれる化学物質が室内空気を汚染することが原因になっています。一昔前までは、木造住宅の通気性の良さから、室内空気が常に汚染されている…なんてこともなく、シックハウス症候群が問題となるようなこともありませんでした。

これが、現在の住宅は高気密化、高断熱化が進んでおり、建材から吐き出された原因物質が、自然換気では外に出ていかなくなってしまっているわけです。シックハウス症候群の根本的な解決策は、化学物質が含まれた建材や家具を一切使用しないということなのですが、正直、今の時代のことを考えると、とても現実的な方法とは言えません。もちろん、ビルダーの中には、できるだけ化学物質を含まない建材を使用するようにしている企業も多くなっているのですが、シックハウス症候群を引き起こす物質は、家の建材にのみ含まれるのではなく、家具にも含まれているので、あまり意味があるとは思えませんよね。

したがって、家族をシックハウス症候群を守るためには、「何が危険なのか?」「日々の生活は何を注意すれば良いのか?」をしっかりと考えて、この記事でご紹介したような対策に取り組みましょう。