住宅ローンが払えない…頑張って手に入れたマイホームはどうなってしまうの?

今回は、何らかの理由で「住宅ローンの支払いが滞ってしまった…」なんて場合、その後、大切なマイホームがどうなってしまうのかについてご紹介したいと思います。昨年から続く、新型コロナウイルス問題は、日本人の社会生活に大きな変化をもたらせており、勤めている会社の業績悪化などを理由にお給料が下がってしまったり、退職せざるを得なくなった…なんて状況の方も少なくありません。実際に、コロナ禍以降、住宅ローンの支払いに関する相談などが急増していると言われており、せっかく手に入れた大切なマイホームを手放さなければならなくなった…なんて方も少なく無いと思います。

それでは、今回のコロナ問題のように、何らかの理由で「住宅ローンが支払えない…」なんて状況になったら、その後はどのような手順が踏まれていくのでしょうか?最終的には、家が取り上げられてしまう…という事は知っているものの、そこに行きつくまでの流れや、最悪の事態を防ぐための対処法については、誰も知っておきたいと考えるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、万一、住宅ローンの支払いができなくなってしまった場合、考えられるその後の流れについてご紹介していきたいと思います。

住宅ローンが払えない時の流れ

それでは、何らか理由で住宅ローンの支払いが滞ってしまった際、その後の家の取り扱いに関する流れについてご紹介していきたいと思います。冒頭でご紹介したように、漠然と「ローンを滞納したら家をとられる…」と考えている方が多いと思うのですが、住宅ローンを滞納したら即座に家を売られる…なんてことはさすがにありません。
ここでは、住宅ローンが払えなくなった後、その後の流れを時系列に沿って簡単に解説していきます。一般的には、以下のような時系列になります。

  • STEP① 催促状が届く(ローン滞納1~3ヶ月)
  • STEP② 期限の利益の損失(ローン滞納3~6ヶ月)
  • STEP③ 競売開始が決定(ローン滞納6~8ヶ月)
  • STEP④ 競売入札期間の通知(ローン滞納8~10ヶ月)
  • STEP⑤ 立ち退き(ローン滞納10~12ヶ月)

それぞれのステップについて、以下でもう少し詳しくご紹介しておきます。

催促状が届く

住宅ローンを滞納すると、債権者である金融機関から電話や書類などで連絡があります。さらに、滞納状態が2カ月を過ぎてくると、来店依頼状や「支払いがない場合、残高や遅延損害金の一括支払いとなる…」といった内容の催促状が届くようになります。
なお、この時点では、競売や差し押さえなどの話はまだ出てきません。

期限の利益の喪失

滞納が3ヶ月以上になってくると、「期限の利益の喪失」の通知が届きます。
「期限の利益の喪失」というのは、分割で支払う権利が失われてしまい、住宅ローンの残高を一括支払いで請求されてしまうことを指しています。また、住宅ローンの滞納が3ヶ月以上になると、個人信用情報機関に金融事故情報が記録される可能性が高いです。

競売開始決定

ここまでくると、『裁判所』から競売開始決定通知が届きます。
競売開始決定通知は、競売の手続きが開始されたということと、不動産が担保として差し押さえされたということを知らせる通知となります。
なお、競売手続きが開始された合図として、現況調査というものが実施されます。これは、裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅に訪れ、強制的に写真の撮影や間取りの確認、周辺環境調査などが行われるものです。この時点で、「競売にかけられる」ということが、近隣にも知れ渡ってしまうことになります。これを回避するためには、現況調査よりも前に「任意売却」に動くしかないでしょう。

競売入札期間の通知

「この期間までに入札をしますよ」という内容の通知が届きます。この後は、競売にかけられた不動産の購入希望者が、裁判所に購入金額を提示して、購入を申し込む期間に入ります。
なお、この段階は、任意売却へ切り替えるための最後のタイミングとなります。ただし、ここまで話が進んでしまっていれば、任意売却の切り替えを金融機関に申し入れても、金融機関の承認が貰えず、競売で売れるのを待つしかなくなる…なんてこともあります。

立ち退き

競売により落札されてしまったら、家の所有権は落札者に移りますので、元の所有者はその不動産に関して何の権利も持たなくなってしまいます。この段階で「自分の家だ!」などと居座った場合には、不法滞在者となってしまいます。
一般的には、落札者との間で立ち退き交渉が行われ、その後立ち退きという流れになります。なお、無理やり立ち退きを阻止しようとした場合、強制執行がなされてしまい、執行官によって強引に荷物が運び出されて追い出されてしまうことになります。

「ローンが払えない…」場合は、早めに売却したほうが良い!

このように、住宅ローンが払えなくなってしまうと、最終的に強制的に立ち退かなければならなくなります。何らかの理由で、「住宅ローンが払えない…」なんてことになり、今後も支払いの見込みが立たない…なんて場合、放置してしまうと「信用情報に傷がつく」「立ち退きせざるを得ない」だけでなく、競売で相場より安く家を売られてしまう…など、何一つ良いことはありません。

そのため、「もうローンを払うのが厳しい…」となった時には、できるだけ早く売却に向けて動き始めるのが大切だと覚えておきましょう。

住宅ローンが払えない時はどうすれば良い?

ここまでの説明で分かるように、長期的に住宅ローンの滞納が続いてしまうと、最終的に「競売」の手続きが進み、強制的に立ち退きさせられてしまうことになるのです。

競売による家の売却では、不特定多数の方が入札を行い、最も高い金額を入れた人が落札するというオークションのような感じになります。ただし、美術品のオークションのようにどんどん金額があがっていく…というようなことはなく、競売による売却価格は市場の相場価格の「60~70%程度」と、かなり安く買いたたかれることになるのです。さらに、個人信用情報にも傷がつき、近隣の人にも競売にかけられた…ということが知れ渡ってしまいます。

要は、融資を受ける人にとっては「競売にかけられる…」ということは、最悪の事態だと言え、本来は、この事態になるまでに別の対処をしておくべきなのです。ここでは、住宅ローンの支払いが厳しい…なんて場合に、できるだけ傷を浅くするための対処をいくつかご紹介しておきます。

金融機関へ相談する

住宅ローンの滞納が始まっていない時点で、「支払いが厳しい…」と考えた場合、まず金融機関に相談してみると良いでしょう。
例えば、何らかの理由で「給料が大幅に下がった…」「共働きでなくなった…」など、これまで通り住宅ローンを支払っていくことが難しくなってしまう…というのは誰にでもありうることです。こういった場合、返済が遅れてしまう前に金融機関に相談することがとても大切です。
きちんと理由を話して、返済計画の見直しを依頼すれば、金融機関としても相談に応じてくれる場合が多いです。というのも、滞納されて競売にかけるよりは、期間が延びてもきちんと返済してもらった方が利益も多いですし、手間もかからないわけです。具体的には、「一定期間は、返済額を減らす」「ボーナス払いを無くす、また減額する」「返済期間を延長する」などが考えられます。

住宅ローンの借り換えを検討する

返済中の住宅ローンについて、金利が高い…と感じているのであれば、思い切って借り換えしてしまうのも手です。
より金利が低い住宅ローンに借り換えることで、返済額を減らすことができます。また、現在の状況や金融機関によっては、借り換えによって返済期間を引き延ばすことができる場合があります。返済期間が長くなれば、それだけ月々の返済額が小さくなるはずですので、余裕をもって返済を続けることができるようになるかもです。

保険適用を検討する

住宅ローンの支払いが難しくなった理由について、病気などが理由の場合、保険が適用できる可能性があります。
住宅ローンを組む際には、多くの金融機関で「団体信用生命保険」という保険への加入を義務付けています。この保険に関しては、「ローン名義人が死亡した場合に、保険金でローン残高が弁済される」ものだとイメージしている方が多いのですが、実は死亡以外にも、所定の高度障害あるいは身体障碍に認定された場合、保険が適用できるのです。
まずは、保険の加入状況や適用範囲などを確認し、自分が適用できるかどうか調べてみましょう。

関連記事:『団体信用生命保険』の基礎知識!団信は絶対に加入しておいた方が良いの?

家を売却する

借り換えなどを行ったとしても、住宅ローンを支払っていける見込みがなく、その家に積極的に住み続けたいわけでもない…という場合、早い段階で売却に動くのがオススメです。
家は、築年数が経過すればするほど、その価値が下落していくものですので、「売却しようかな」と思ったタイミングで動くことが、最も高く売るためのコツでもあるのです。なお、不動産を売却するにも、『仲介』による売却であれば、数カ月は時間がかかりますので注意してください。とにかく早く売りたい場合は、不動産会社に直接買い取ってもらう不動産買取という手法が良いでしょう。

任意売却

既に住宅ローンの滞納が始まっている場合、不動産を売却するにも「任意売却」という手法になります。

任意売却は、「住宅ローンの残高が不動産の売却額を上回っていても行うことのできる不動産の売却方法で、住宅ローンの滞納者のみが行える住宅ローンの処理方法」となります。これは、競売になる前に、金融機関と交渉して、承認を得ることで行うことができる売却手法です。基本的に、競売よりも高く売却することができますので、競売になる前に絶対にこの手法をとった方が良いです。

まとめ

今回は、住宅ローンの支払いが難しくなってしまった…なんて場合、その後のマイホームの取り扱いがどうなってしまうのかについてご紹介してきました。この記事でご紹介したように、住宅ローンを滞納したからといって、すぐに競売などの強い措置がとられるわけではなく、徐々に各ステップが進んでいく…ということになります。しかし、住宅ローン滞納者の中には、「金融機関に連絡してもどうせ払えないし…」などと、金融機関からくる通知を全て無視してしまうような方がいます。そのような対応をしてしまうと、最終的に、強制立ち退きになってしまいますので、絶対にやめておきましょう。

住宅ローンの支払いに関しては、ある日突然支払えなくなる…というよりかは、「収入が減って、ローンの支払いが厳しくなってきたな…」など、事前に支払いの難しさに気付くことができるはずです。したがって、滞納が始まってしまう前に、金融機関に相談して返済計画を練り直したり、借り換えによって負担を減らせないか調べてみるのがオススメです。それでも、返済が厳しい…という場合には、自分の意志で売却したほうが高く売れますので、競売になるまで放置するのはやめましょう。

なお、新型コロナウイルス感染症により、住宅ローンの支払いが厳しくなった…という場合は、さまざまな救済措置が用意されていますので、金融庁のサイトなどご確認ください。

> 金融庁「新型コロナウイルス感染症関連情報」