加入率が高いわりにイマイチ理解されていない火災保険!火災保険に関するよくある勘違いをご紹介!

新築戸建て住宅を購入する際には、一部の例外を除いてほとんどすべての方が火災保険に加入することになります。例えば、金融機関の住宅ローンを利用する場合であれば、ローン支払い中は火災保険への加入が必須の条件となっているため、入りたくない…と考えたとしても、それは不可能な訳です。

ただし、火災保険に関しては無理矢理加入させられている…などとネガティブな考えを持つ必要はないと思いますよ。というのも、この保険は、非常に幅広い補償範囲を持っていることが特徴で、「住まいの総合保険」などと呼ばれることもあるなど、その家に住んでいる際に起きるさまざまな問題を解消してくれる非常に心強い仕組みの保険なのです。最近では、屋根や外壁リフォーム業界が「火災保険を利用すれば無料で修理できる!」などという文言を営業トークにしていることも増えており、火災保険の有用さは一般の方の間でも徐々に知れ渡ってきているように思えます。

しかし、非常に加入率が高い火災保険ですが、その割に「間違った認識」を持っている方も少なくありません。そこでこの記事では、ほとんどすべての方が関わることになる火災保険について、多くの方がしている火災保険に対する勘違いをご紹介していきたいと思います。

関連記事:水害が急増している現在、火災保険の水災補償は必要?そもそも水災補償って何を補償してくれるの?

勘違い① 火災保険は住宅火災のみに備える物

この勘違いは多いです。火災保険という名称から、住宅火災の被害を補償してくれる保険だと考えてしまう訳ですね。しかし、冒頭でご紹介したように、火災保険は『火災』のみの補償をしてくれるだけではなく、非常に幅広い補償範囲を持っていることが特徴です。最近では、火災保険のテレビCMなども補償範囲の広さをアピールするように作られていますし、勘違いしていた人の中には「何のことだろう?」と疑問に思っていたかもしれませんね。
火災保険に関しておさえておきたいのは、この保険は、対象となる建物や家財に関して、火災はもちろんその他の自然災害で生じた損害の補償もしてくれるものだということです。

火災保険の補償内容を抑えておこう!

『火災』保険という名称から、住宅火災に備えるための保険だと考える方がいるのですが、実はこの保険は風災や水災、雪災や雹災など、さまざまな自然災害から受けた被害を補償してくれるものなのです。近年では、日本国内でさまざまな自然災害が頻発していますので、火災保険の重要度が年々高まっていると考えられます。なお、火災保険は、加入する方が「どこまでを補償してもらうのか?」を考えて、特約を付帯する形になっており、最も一般的なパッケージ商品では水災の保証がしてもらえない…なんてことも多いです。したがって、火災保険加入時には、保証内容の詳細をしっかりと確認しておきましょう。一般的に、火災保険は以下のような被害を補償してくれます。

  • 火災、破裂、爆発、落雷
    スタンダードな火災保険の補償範囲に入っていると思います。これは、失火や延焼・ボヤなどの火災、ガス漏れなどによる破損・爆発の損害、落雷による損害等の補償です。
  • 風災・雹災・雪災
    風災補償は最初から付帯されている場合が多いです。これは、台風などの強風による損害や、雹(ひょう)や霰(あられ)による損害、豪雪地帯で雪の重みで建物に被害が…、雪の落下で屋根が破損したなどの雪災により生じた損害を補償するものです。
  • 水災
    加入者の判断で付帯するのが普通です。台風、暴風雨、豪雨などによる洪水や高潮、土砂崩れなどにより生じた損害を補償する
  • 水濡れ
    水災補償と勘違いしないようにしましょう。こちらは、給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故による水濡れ被害を補償するものです
  • 物体の落下・飛来・衝突
    自動車の飛び込みや飛び石など、建物外部から物体が落下・飛来・衝突したことにより生じた損害を補償するものです
  • 盗難
    家財の盗難や盗難に伴う鍵・窓ガラスなどの建物損害を補償するものです
  • 破損・汚損など
    子供が家でボール遊びなどをしていて誤って窓ガラスを破損してしまった…など、事前に予測して防ぐことができない、突発的な事故によって生じた建物・家財の損害を補償するものです

火災保険は、上記のように、非常に幅広い補償範囲を持っています。ただし、個別の状況や契約内容により補償範囲は変わってきますので、加入時に「どこまで保証してもらうのか?」を慎重に考えましょう。

勘違い② 火災保険の重複契約について

火災保険について、同じ建物や家財に2つ以上の保険をかけることを「重複保険」と言います。そしてこの重複契約については、「火災保険に2つ入っていれば、両方から保険金がもらえる」などという考えを持って行う方がいるのですが、ほとんどの場合、重複契約には何のメリットもなく、保険金の無駄払いになると考えた方が良いです。

火災保険は、火災や自然災害などで建物や家財に損害を受けた時、その損害を補償してくれる保険です。要は、何らかの突発的な事象によって被った損失を穴埋めするのが目的だと考えましょう。そして、保険会社から受け取れる保険金については、「いくらの損害を被ったのか?」によって決められるもので、本人が受け取りたい金額を決められるようなものではないのです。
例えば、加入している火災保険が、3000万円の保険金額だったとしても、火災によって被った損害(修繕費など)が2000万円だったのなら、支払われる保険金額は2000万円となり、それ以上のお金を支払われる事はないのです。これは、1社の保険会社から…という話ではなく、保険金額としてという話で、2つの火災保険に入っていたとしても、2倍の保険金を受け取れるわけではないと理解してください。

そもそも火災保険というものは、建物の構造などから決められる現在の『建物の価値』が保険金額とイコールになるよう設定するルールがあります。建物の価値については保険会社が一定の基準をもとに決める物で、現状で3000万円と評価される建物であれば、それ以上の保険金をかけるようなことは原則できないのです。そして複数の火災保険をかけるという点についても、火災保険加入時の告知事項に、他の火災保険に加入しているか否かを申告しなければならない項目があります。この部分について、複数の火災保険に加入していることを伝えずに加入してしまうと、告知義務違反となり契約解除や保険金の支払い拒否などの対応を受けてしまう恐れがあります。

皆さんが覚えておきたいことは、火災保険は受けた損失分の穴埋めをするもので、損失額を超えた保険金を支払ってもらうことはできないということです。さらに、3000万円と評価された建物について、3000万円ずつ2つの火災保険、計6000万円の保険にはいったとしても、受け取れるのはあくまでも3000万円です。この決まりから、複数の保険会社に加入したとしても、保険金の無駄払いになってしまうという訳です。
ちなみに、共済火災に加入している場合、火災保険と火災共済の組み合わせでも、損害額を超える保険金・共済金の受け取りはできません。

重複契約が有効なケース

上述の通り、火災保険の重複契約は、ほとんどの場合は保険金の無駄払いとなってしまいます。ただし、保険金額の合計が、「建物や家財の評価額を超えない」という場合は、保険料が無駄になるとは言えない場合もあります。
例えば、現在加入している火災保険の保険金額が、建物の評価額に満たないことから、万一のことを考えて不足分を別の火災保険で補う…と言った場合であれば、その契約は有効と言えるでしょう。ただし、保険金額が上限値でも足りない…など、かなり特殊な事情でない限りは、保険申請の手間や契約手続きの手間が倍になるだけですので、元の保険を拡充するのがオススメです。

勘違い③ 自宅が損壊したら、火災保険で建て直せる

火災保険に加入する理由は、「火災や災害で自宅が損壊したら、新しい家を建て直せるから」と考えている方が多いと思います。しかし、「自宅が全損した場合は必ず火災保険で同じ物件を建て直せるか?」というとそうではないので注意してください。

火災保険は、契約時に建物の保険金額をどのぐらいにするのかを設定します。上述したように、火災保険の保険金額は、保険会社が一定の基準をもとに建物評価額から決定するのですが、この評価額には「時価」と「新価(再調達価格)」という2つの求め方があるのです。

現在の火災保険事情では、同じ建物を新たに建築あるいは購入する場合に必要になる金額で設定する「新価(再調達価格)」で契約することが一般的になっています。ただし、古い長期契約している火災保険の中には、「時価」での契約になっている場合も多いです。この場合、同じ建物を新たに建築あるいは購入するために必要な金額から経年劣化による価値の減少や消耗分を差し引いた金額が保険金額となります。

つまり、「時価」での契約になっている火災保険の場合、火災や自然災害などで住宅が全損被害を受けてしまったとしても、新たに建築あるいは購入するためにかかる満額を保険金として受け取る事ができないわけです。現在、長期契約している火災保険に加入している方は、今一度、火災保険の補償内容を確認しておきましょう。

保険金額の設定について

保険金額の設定については、建物評価額と同じにするのが一般的ですが、少ない場合、多い場合も存在します。評価額と同じ場合は「全部保険」少ない場合が「一部保険」、多い場合が「超過保険」と呼ばれ、以下のような点に注意してください。

  • 全部保険
    建物評価額と保険金額が同一となっている状態です。ただし、時価の契約の場合は、十分な補償を受けられない危険があるので注意しましょう。
  • 一部保険
    建物評価額よりも保険金額を低く設定している状態です。この場合、損害額の一部しか支払われないことになるので、注意してください。
  • 超過保険
    建物評価額以上の保険金額を設定している状態です。ただし、支払われる保険金は建物評価額が限度ですので、超過分の保険料を無駄に支払っているだけです。

保険金額の設定にも、上記のように種類があり、新価(再調達価格)で契約していたとしても、正しい保険金額の設定ができていない場合、十分な補償を受けられない危険もあるため注意してください。

勘違い④ 地震による被害も火災保険で補償してもらえる

火災保険は、水災や風災など、さまざまな自然災害による被害を補償してくれます。そのため、地震による被害に関しても火災保険で補償してもらえると考えている方がいます。しかし、火災保険は地震の被害による損害の補償は行っていません。地震による被害とは、「地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流出による建物や家財の損壊」と言った損害です。

地震による被害は、広範囲かつ大規模な損害になってしまうことが多いため、民間の保険会社だけでは保険金の支払いが難しくなってしまう恐れがあります。したがって、地震については、政府と保険会社が共同で運営を行う地震保険が作られており、これを火災保険に付帯する形で加入するものなのです。

つまり、火災保険に地震保険をセットで付けておかなければ、損害の補償を受けることはできないということです。

地震火災費用

火災保険の契約に「地震火災費用」がセットされているケースがあるのですが、この場合は「地震が原因で建物が半焼した」など、一定の火災が生じた時には『火災保険金額の5%かつ300万円を上限』とした「地震火災費用保険金」が支払われる契約が存在します。
なお、この契約は、保険会社によって補償内容や名称が異なりますので、詳しくは加入している保険会社に問い合わせてみてください。

まとめ

今回は、「住まいの総合保険」と呼ばれる火災保険に関するよくある勘違いをご紹介してきました。火災保険は、非常に幅広い補償範囲を持っていることが特徴で、火災だけでなく、さまざまな自然災害による損害も補償してもらうことができます。しかし、この補償範囲の広さに関して、拡大解釈してしまっている方も少なくないので注意しましょう。

火災保険による補償はあくまでも、建物評価額が限度となりますので、複数の保険を重複契約して、火災保険などで儲けようなどと考えないようにしてください。重複契約の告知義務を無視して、保険申請しようとすると、どちらの保険金も支払われなくなる…なんてリスクも存在します。