皆さんは、新築一戸建てと聞けば、どのような住宅をイメージするでしょうか?一般的に、戸建て住宅と言えば二階建てのイメージが強く、最近の都市部などであれば、狭い土地を利用して家を建てるといった感じですので、三階建てをイメージする方も多くなっているかもしれませんね。
しかしここ数年、新築業界でも徐々に人気が高くなっていると言われるのが『平屋住宅』なのです。要は、一階建ての住宅のことで、どちらかというと、階段の上り下りが難しくなるシニア世代向けの住宅と言ったイメージが強いかもしれませんね。それがここ数年、若い世代の間でも平屋新築の人気が年々高くなっており、「家族の気配を感じながら過ごせる」「二階建てよりも家事や子育てがしやすそう」などといった意見が目立つようになっているのです。
そこでこの記事では、なぜ今、平屋新築の人気が高くなっているのか、また平屋新築を建てる際に注意しておきたいポイントなどを簡単にご紹介していきたいと思います。
新築業界で平屋の割合が増えている!
新築業界では『平屋』という言葉を聞く機会などあまりない…というイメージが強いかもしれませんね。平屋は、ずばり一階建て住宅のことを指しており、ワンフロアで生活が完結することになるので、シニア世代や小さなお子様にとっては、非常に過ごしやすい環境になると言われています。
こういった事もあり、『平屋住宅』というのは、シニア世代向けの住宅というイメージが強く、若い世代が新築住宅を建てる時には、見向きもしない…ことの方が多かったように思えます。しかし、ここ数年では、シンプルですっきりしたデザイン性になる事や、子育てや家事動線が考えやすいなどといった事から、若い世代からも平屋住宅の人気が高くなっていると言われています。
実際に、国土交通省のデータによると、2020年度の平屋の着工件数は、4,7452件と、2012年度と比較すれば、約5割増しになってます。さらに、住宅全体に占める平屋の割合も、20年度が11.5%となっており、12年度の6.9%と比較すると大幅に伸びていることがわかります。
若い世代から平屋新築が人気の理由は以下のような意見があるからだそうです。
- ワンフロアで完結するため、家族の気配を感じ取りながら、心地よく過ごせる
- 2階建てのような家は、細切れの間取りになってしまい、子育てに不向きと感じる方が多くなっている
- 平屋は、キッチンや洗面などの水回りが一直線で、家事や育児の動線が良い
そもそも、最近の若者世代は、住まいの原体験が団地やマンションという方も多く、コンパクトでフラットな空間に親しみを感じる、利便性が高いと感じるという方が多くなっていると言われています。こういった、家に求める機能が異なってきたことから、シニア向けと言われていた平屋住宅の人気が若者世代にも広がっているようです。
参考:国土交通省「建築着工統計調査報告」
平屋住宅のメリット
それでは平屋住宅にあるメリットをご紹介していきましょう。上述したように、若い世代からも人気になっている平屋住宅ですので、それ相応のメリットが存在します。ここでは、代表的なメリットをいくつかご紹介しておきます。
家の中での上下移動がなくなり暮らしやすい
平屋は、家での生活全てをワンフロアで住ませることが可能です。例えば、最近多い3階建て住宅では、1階部分に洗濯機置き場があり、二階や三階のベランダに洗濯物を干すという場合、何度も階段の上り下りが必要になりますよね。これが平屋建てであれば、全て同じ階ですませることができるようになるため、家事動線の無駄がなくなるわけです。
最近では、二階建て、三階建て住宅を建てる時も、家事動線を重視するという方が多くなっているのですが、建物の構造的な問題で、奥様の希望全てを取り入れるということは難しいものです。平屋であれば、一階建てですので、必然的に上下移動がなくなり、家事を楽にこなすことができるようになります。ちなみに、家事動線を意識した間取り作りは、家事が楽になるだけでなく、時間の節約にもつながります。
ワンフロアで、子供の表情まで良く見える家づくりにしておけば、何かと忙しい朝でも、洗濯機を回しながらパパッと朝ご飯を用意して、お子様の世話もスムーズにすることができるようになります。もちろん、奥様にとっても、買い物から帰ってきて、重たい荷物を持って階段を上る…なんて負担がなくなりますので、日常生活を効率よく過ごせるようになるわけです。
さらに、階段がないワンフロアな間取りは、老後など、何十年先の将来を見越した時も「負担が少なく快適に生活できる!」というメリットが考えられるでしょう。
家族のコミュニケーションがとりやすい
二階建てや三階建ての家と比較すれば、家族との距離が近く、顔を合わせる機会が多くなります。したがって、毎日のコミュニケーションがとりやすく、家族の変化などにもいち早く気付くことができるようになります。自立心を育てるためには、子供専用部屋はあったほうが良いのですが、階まで違うと、子供部屋にこもりきりになる…なんてことも珍しくありません。ワンフロアの平屋住宅では、自然とリビングに家族が集まるようになり、会話を楽しむことができると言われています。
特に、小さなお子様がいる子育て世帯であれば、なるべく目の届く範囲にお子様にいてほしいと考える物でしょう。お子様からしても、常に親の存在を感じることができますので、家事をしていてもお子様が愚図る…なんてことが減るかもしれませんね。
建物や間取りの自由度が高い
平屋住宅は、上の階の重みがありませんし、二階建て住宅よりも荷重を受ける柱の負担が少なくなります。したがって、「広いリビングが欲しい!」といった要望でも、柱の数がおさえられることから、余裕をもって作ることが可能です。
また、天井の仕上げなどもさまざまなバリエーションが存在します。例えば、部屋の上部はそのまま屋根となりますし、傾斜のある屋根とした場合、その傾斜を生かした勾配天井(斜めになっている天井)を導入して、オリジナリティのある家を作るなんてこともできます。最近では、天井を貼らずに、梁をわざと見せるような仕上げにして、開放感のあるデザインにする方も多いです。
他にも、天井を高くすれば。ファンなどを設置しても圧迫感がありませんし、大きな窓やハイサイドライト(高窓)を導入すれば、自然光をたっぷりと取り入れられ、照明を使わなくても明るい家を実現できます。ロフトを作って屋根裏収納スペースにするなんてことも自由に選べるという点は非常に大きなメリットになります。
なお、平屋住宅の大きなメリットとしては、家の形自体の自由度も高いという点です。インターネットなどで検索していただければ良いと思いますが、二階建てや三階建てでは考えられないような形をした独特なデザインの家が多いです。平屋住宅は、土地のデメリットすら生かして家を設計することができると言われており、「変形地で家は建てられないかな…」と思うような土地でも、プロの設計士がユニークな平屋プランを作ってくれます。
耐震性・耐風性が高い
日本は、地震や台風などの自然災害が非常に多い国として有名なのですが、平屋住宅は、こういった災害に強いという点が非常に大きな特長の一つになっています。
平屋ですので、高さもありませんし、上の階の重みがかからない分、地震時の揺れの影響が少なく、倒壊の恐れが非常に少なくなります。また、家の高さが低いということは、強風の影響を受けにくいということですので、台風による被害も少なくなります。沖縄の住宅に平屋が多いのは、台風に備えるという意味合いもあるので、災害の多い日本の家屋と考えると、平屋は非常に適していると言えます。
住宅のメンテナンスコストが削減できる
どのような住宅でも、建ててしまえば一生新築の状態を「維持してくれるなんてことはありません。家は、そこに存在するだけで徐々に劣化が進行してしまうものですので、定期的な点検とメンテナンスが必要不可欠になるのです。
そして、将来的なメンテナンスのことを考えると、平屋は構造がシンプルですし、メンテナンスを必要とする項目自体が少なくなるため、二階建てや三階建てよりもコストが抑えられるわけです。実際の施工に関しても、足場の組み立てが必要ない、塗装面積が少なくなるなど、複階層の建物と比べればかなりのコスト削減が可能になります。
家というものは、そこで何十年と過ごしていくことになるわけですから、メンテナンスにかかる総額のコストは皆さんが考えている以上の節約効果があると考えましょう。
平屋住宅のデメリット
上述のように、平屋住宅にはさまざまなメリットが存在しており、これらのメリットから新築時に平屋を選ぶという方が多くなっているのです。ただし、何のデメリットもないのかというとそうではないので、平屋のデメリット面もしっかりと押さえておくようにしましょう。
広い土地が必要
家族で住むことを考えた場合、平屋は二階建てなどよりも広い土地が必要ですし、設計には敷地条件が大きく影響します。
あまり聞いたことがないかもしれませんが、建物を建てる時には『建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)』や『容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)』が決められています。例えば、「建ぺい率:50%、容積率100%」の場合、100㎡の土地があったとしても、平屋の場合は建てられる家の延べ床面積が50㎡になってしまいます。これが二階建てになると、100㎡になるのです。
つまり、せっかく理想の立地の土地が見つかったとしても、形や広さの関係で、平屋の場合は理想の間取りを実現する事ができない…なんて可能性もあるわけです。平屋新築を建てる時に、間取りに強いこだわりがある場合は、土地を先行して探すのではなく、家づくりと一緒に考えておいた方が良いと思ってください。
建築コストが割高になってしまう
まず平屋の場合、広い土地が必要になるので、土地代が嵩んでしまいます。また、二階建ての住宅と比べれば、屋根や基礎が大きくなってしまうことから、工事が大掛かりになってしまうため、全体的なコストが割高になってしまうという点が大きなデメリットです。
そもそも「広い土地が必要」という点は、地価の高い都市部では致命的なデメリットになりますので、あまり見かけないのはそのせいです。
水害には弱い
台風や地震などの自然災害に強いというメリットがある一方、記録的な大雨による河川の氾濫など、水害が発生した場合には、全ての部屋が水没してしまう…という危険があります。
近年では、台風の大型化や夏場の集中豪雨が頻発しており、中には数年に一度の頻度で水害にあっている…なんて地域も存在します。平屋住宅は、高さがないため、床上浸水した時には、家中が水浸しになってしまいます。したがって、土地を探す際には、ハザードマップなどで水害の危険性をしっかりと確認し、海抜情報などもチェックして決めましょう。
防犯上の問題
平屋住宅は、全ての部屋と窓がフラットになってしまいますので、防犯上の不安があると考える方が多いです。平屋住宅にする場合、家族のプライバシーをどのように確保するのか、また防犯対策はどうするのかをしっかりと考えておかなければいけません。
例えば、接道から家の中が見えないようにするため、視界を遮る塀を建ててしまうと、空き巣犯も人に見られずに仕事ができるようになり、窓破りなどで侵入されてしまう恐れがありますね。平屋住宅の防犯対策は、プライバシーの確保と防犯性能のバランスをよく考えて導入しなければいけないと考えてください。
プライバシーの問題
外部からの視線を防ぐプライバシー問題もありますが、ワンフロアで家族の一体感が得られてコミュニケーションがとりやすいという平屋住宅は、ご家族ごとのプライバシーを確保しにくい…という問題点があります。
親からすれば、子供がちゃんと勉強しているのか常に視界に入れておくことができると思うかもしれませんが、子供からすれば「常に監視されている…」と感じてしまうかもしれません。また、テレワークが普及してきた現在では、「集中して仕事をする」「一人の時間を大事にする」ということを考えると、独立したスペースをどのようにして設けるかが大切になります。
まとめ
今回は、ここ数年の新築住宅事情について簡単に解説してきました。新築戸建ての購入と聞くと、多くの方は二階建てや三階建て住宅をイメージすると思うのですが、ここ数年の状況を見てみると、年々平屋住宅の人気が高くなっており、若者世代でも平屋住宅を望んでいる方が多くなっていると言われています。
こういった状況から、大手ハウスメーカーも「平屋住宅の将来性」を感じており、平屋住宅にスポットを当てたプランを作っているような企業も多くなっています。平屋住宅は、家族間のコミュニケーションがとりやすいうえ、家事動線が非常に良い間取りになることから、日々の生活が効率的になると言われています。さらに、上下移動のない間取りは、年をとった時の自分たち将来の生活まで考えても非常に大きなメリットがあると言われているのです。
もちろん、平屋住宅にもいくつかの注意点がありますので、絶対に平屋がおすすめというわけではありませんが、さまざまな利点があるのは確かだと思いますよ。自分たちの理想の生活は、どのような家なら実現できるのか分からない…という方がいれば、ぜひむとうの家までお問い合わせください。むとうの家では、経験豊富な設計士がお客様のお話を聞いたうえでアドバイスしていますし、女性スタッフも多いので、主婦目線での家づくりのアドバイスも行っています。