【続報】マイホームは「ウッドショックが落ちつくまで待つ?」実は木材価格はどんどん高騰している!

半年ほど前に、このサイト内で「コロナ禍で突然表面化した『ウッドショック』!マイホーム検討中の方にどんな影響が考えられるのか?」という記事を公開しましたが、非常に多くのアクセスを頂きました。今回の記事は、ウッドショックの続報をご紹介しようと思うのですが、残念ながら半年前よりも好転しているとはとても言えるような状況ではなく、正直悪化しているのでは…とさえ思える情報ですので、心してご覧ください。

「そこら中に木が生えているのに何で木材不足なんかが?」と思う方は、以前の記事をまず読んでいただければと思います。ウッドショックは、新型コロナ問題によりアメリカで新築需要が急増したことやコロナ禍をいち早く抜けたと言われる中国が、世界中で木材を買い占めている、ロックダウンなどにより輸送網が大きく乱れた…などと言った事が原因で世界中で木材が不足し、新築住宅に使用する木材価格が高騰しているというものです。前回記事にしたときには、輸入木材が確保できないという状況で、「今後、工期遅れや建築費の高騰などの問題が生じるのでは?」と言った感じでしたが、あれから半年程度経過して「ウッドショック解消の見通しは立っているのかな?」と思い始めた人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、現在日本国内に入ってきている木材について、ウッドショックの影響がどの程度出ているのかを、経済産業省が公表しているデータなどから考察していきます。近々、憧れのマイホームを…と考えていた方であれば、「ウッドショックが落ち着くのを待った方が良いのかな?」と考えている方も多いと思うのですが、正直な話、この問題の影響は10年近く続くのでは…といった予想をする方も出てきています。つまり、本格的なウッドショックの影響が出てくる前に、家は購入したほうが良いかも…ということです。その理由を以下でご紹介していきましょう。

木材価格はどんどん高騰している

それでは、ウッドショックがどのように推移しているのかについて、経済産業省が公表したデータを元にご紹介していきます。

今年の5月頃より、ウッドショックに関する情報が出回るようになり、マイホームの購入を先延ばしにしているという方も多いのではないでしょうか。こういった方の多く、「木なんてそこら中に生えているし、数カ月でウッドショックなんてなくなるでしょ。」「工期遅れが出る、建築費を上げられるリスクがあるなら、1、2年待った方が良いかな?」と言った感じで、ウッドショック問題が落ち着くまではしばらく様子見をしていようという考えだと思います。現在は、日本国内でも新型コロナ問題の影響が大きく、なかなか外出するのも難しかった…というのも要因の一つかもしれませんが、1年程度待てば木材不足が解消され、ウッドショックなど気にせずに家を選べるという考えなのだと思います。

しかし、この半年間の木材価格の状況を見ていると、悠長に待っていると、マイホームの購入タイミングを完全に逃してしまうのではないか…といった様相になってきているのです。以下で、2021年9月までの木材価格の動向をご紹介していきます。

木材・木製品・林産物の輸入価格について

引用:経済産業省サイトより

上のグラフは、日本銀行の企業物価指数(輸入価格指数)を使って算出した木材の輸入価格の動向を示したものです。

これによると、2021年9月時点での木材・木製品・林産物全体の輸入価格は、前年末比で69%上昇しているということがわかります。これは、木材全体で見ていることから、この程度の上昇幅になっているのですが、細かくみると、衝撃的な上昇を見せているような物も存在します。
例えば、加工前の丸太に関しては、比較的上昇幅が小さかったのですが、それでも前年末比23%の上昇となっています。そして、合板と集成材に関しては、前年末比でそれぞれ、「合板:49%」「集成材:149%」の上昇で、集成材に関してはなんと約2.5倍もの価格になるなど衝撃的な上昇を見せているのです。さらに、製材の輸入価格については、前年比2.37倍(137%)になっているなど、ウッドショックによる価格高騰は、今後さらに本格化していくのではないか…という予想になっているのです。

※集成材とは
集成材は、家の構造体や床などの建材・家具などに使用される部材で、製材された板あるいは小角材などを乾燥し、節や割れなどの欠点の部分を取り除き、繊維方向をそろえて接着剤で接着してつくる木質材料のことです。天然材に比べ、強度や寸法安定性、耐久性に優れ、湾曲した材料も製造できるのが特徴です。

製材の輸入価格について

引用:経済産業省サイトより

上のグラフは、価格高騰が著しい製材の輸入価格について、輸入先別の指標となっています。これによると、アメリカからの輸入価格は、2021年9月時点で、前年末比2.75倍に達しており、全体の製材輸入価格を大きく押し上げる原因になっています。ロシア(北洋)からの輸入価格については、前年末比で96%と、アメリカと比較すれば上昇幅が大きくないように思えますが、それでも2倍近くの上昇を見せているということですので、全世界規模で木材の価格上昇が起きているということがよくわかるデータになっています。なお、欧州からの輸入価格については、8月頃までは緩やかな上昇に収まっていたのですが、それ以降急激な上昇を見せ始め、9月になると、北洋からの輸入製材と同程度の上昇幅となっています。この勢いが続けば、さらに輸入価格は上昇すると考えられるので、世界市場の動向から目が離せない状況です。

丸太の国内価格について

引用:経済産業省サイトより

ここからは、国内での木材価格についてです。上のグラフは、丸太の国内価格なのですが、上述したように、丸太の輸入価格は前年末比で23%上昇している状況です。そしてこれが国内価格になると、35%の上昇となっています。この上昇幅の違いについては、今まで輸入丸太を使用していた企業が、国産材の調達に切り替えるようになってきており、可能な木材から切り替えつつあり、国産丸太の需要も高まっているからだとされています。

特に、ひのき材の丸太に関しては、非常に需要が高くなっており、9月時点には前年末比で76%の大幅な価格上昇を見せています。これについては、ウッドショックの長期化や木材価格の高止まりが継続すると考えている企業が非常に多く、来年以降も安定的な加工木材の供給を確保するため、国産材の調達が既に本格化しているのが要因だと考えられています。
ただし、日本国内の林業は衰退の一途をたどっていたこともあり、今回のウッドショックを契機にしたとしても、人材不足やインフラの整備などの問題があり、短期間の一気に国内生産を増加させることは困難だとされています。つまり、今後も丸太の国内価格は高止まりすることが予想されています。

木材・木製品の国内価格について

引用:経済産業省サイトより

最後に、木材・木製品の国内価格(企業間の取引価格)についてみていきましょう。木材・木製品については、2021年9月時点で前年末比47%の上昇となっています。

合板に関しては、比較的落ち着いた動きになっているものの、製材の国内価格については前年末比で62%と大幅な上昇を見せています。上述したように、製材の輸入化価格は、前年末比で2.37倍と、記録的な急騰を記録しており、これが国内価格にも影響を与えているのだと考えられます。ただし、輸入価格ほどの上昇を見せていないのは、製材を使用する企業が、一時的に自らの利益を圧縮したり、代替可能な部分については、輸入材から安価な国産材にシフトさせたなど、企業努力によってウッドショックの一部を一時的に吸収していたという状況です。

さらに、集成材に関しても、上述のように、9月時点で前年末比2.49倍と、こちらも記録的な上昇を見せています。そして国内価格についても、2.27倍の上昇と非常に厳しい結果になっています。集成材については、国際競争力などの観点から、国内での生産体制面での課題などもあり、短期的に需要を満たすことが難しく、輸入価格上昇の影響をそのまま受けた…というのが要因だと言われています。なお、集成材の高騰に関しては、木材の価格高騰だけが原因ではなく、接着剤の高騰も大きな要因になっていると考えられます。そして、集成材に関しては、8月から9月の1か月間で国内価格が11%も上昇をしており、まだまだ国内価格の上昇が懸念されています。

ウッドショックの影響は今後本格化する

ここまでの説明で分かるように、ウッドショックの第一弾をご紹介した5月と比較すれば、家を建てる際に必要になる木材価格は、信じられないほどの高騰を続けています。そして、今後この木材価格については、直ぐに下落していくという予想は立っておらず、高止まり、もしくはさらに上昇していくのではないかと考えられているわけです。

上述したように、製材の輸入価格が急騰しているものの、国内価格はそこまでの上昇を見せていないのは、家を建てている建設会社や木材卸会社などが、一時的に自社の利益を圧縮し実現していることです。しかし、こういった企業努力も永遠に続けられるような事ではありませんし、限界が来れば住宅の価格に転嫁されていくことでしょう。実際に、世界的な原油価格の高騰が現在問題視されていますが、輸送コストの増大などが原因に、キッコーマンが14年ぶりに醤油の値上げに踏み切ったという衝撃のニュースがつい最近ありましたね。さまざまな日用製品が値上げされる中でも、企業努力により値上げを防いでいた企業でも、さまざまな要因が組み合わさり値上げせざるを得ない状況が世界中で起こっているのです。

日本の住宅は、そのほとんどが木造住宅ですし、木材の価格上昇は住宅の価格自体に非常に大きな影響を与える問題です。そして、不動産会社や建設会社自身の利益圧縮によって値上げを防ぐ事は、既に限界に来ていると考えられますので、ウッドショックによる住宅価格の高騰は今後、本格化すると考えておきましょう。

つまり、近々マイホームの購入を…と考えている方であれば、「ウッドショックが落ち着くのを待つ…」のではなく、「ウッドショックの本格的な影響が出る前に購入する」という考えに切り替えた方が良いかもしれませんよ!