2022年本格実施される『こどもみらい住宅支援事業』とは?

今回は、令和3年11月26日に閣議決定された『こどもみらい住宅支援事業』の内容について簡単に解説しておきたいと思います。

SDGsやカーボンニュートラルなど、環境問題にまつわるキーワードをよく耳にするようになった昨今ですが、住宅業界でもできるだけ環境に優しい住宅が求められるようになっています。このような状況の中、これから新たに新築戸建て住宅を取得しようと考えている若者世代に向けて作られたのが「こどもみらい住宅支援事業」です。国土交通省の公式サイトでは、この事業が制定された背景について、以下のように説明されています。

子育て世帯・若者夫婦世帯の住宅取得に伴う負担軽減を図るとともに、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図るため、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に対して補助金を交付する「こどもみらい住宅支援事業」を創設します。
引用:国土交通省公式サイト

今回の助成制度は、若者世代の住宅取得にかかるコスト負担の軽減と、環境に優しい住宅ストックを国が後押ししていくということが目的です。近年の新築業界では、『高気密・高断熱住宅』や『ZEH住宅』などが推奨されるようになっているのですが、環境に優しいエコな住宅が出来上がるものの、建築費が割高になってしまう…ということで、なかなか若者世代では手が出ない…という声も少なくありません。しかし、世界的に脱炭素社会の実現が求められている中、人が一日の内、多くの時間を過ごすことになる住宅の脱炭素化を急がなければならないというのが背景にあるのだと思います。
新しく制定された支援事業ですので、その中身が気になるという方が非常に多いと思いますので、この記事では簡単に要点をまとめていきたいと思います。

こどもみらい住宅支援事業の概要

それではまず、『こどもみらい住宅支援事業』の主な内容についてご紹介していきます。こういった補助制度で気になるのは、やはり補助対象や要件の部分だと思いますので、その辺りを報道資料からピックアップしておきます。

新築取得における対象者と要件について

『こどもみらい住宅支援事業』は、補助対象事業のタイプが「注文住宅の新築」「新築分譲住宅の購入」「リフォーム」の3つに分かれています。ここでは、「注文住宅の新築」「新築分譲住宅の購入」の要件についてご紹介しておきます。

今回の補助制度の対象となるのは、注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入どちらとも、所有者となる子育て世帯・若者夫婦世帯が対象となっています。そもそも、この補助制度が制定された目的が、『子育て支援及び2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等に対して補助することにより、子育て世帯・若者夫婦世帯の住宅取得に伴う負担軽減を図るとともに、省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図る。』というものですので、誰もが対象者となれるわけではないのです。
ただし注意が必要なのは、「子育て世帯・若者夫婦世帯」が対象と言われると、20代などの若者のみが対象となっていると考えてしまうのですが、実は18歳未満のお子様がいるご家庭であれば、40代や50代の世帯も対象となります。
取得する住宅の要件については以下のようになっています。

  • 自ら居住することを目的にした住居であること
  • 高い省エネ性能を有する住宅で、延べ面積が50㎡以上であること

なお、省エネ性能に関しては、住宅の性能別に補助額が以下のように設定されています。
引用:国土交通省資料より

今回の補助制度は、主な住宅取得層となる子育て・若者世代を対象としていますし、住宅に求められる要件もそこまで難しいものではないので、多くの方にとって利用しやすい制度になると思います。

補助制度のスケジュールについて

『こどもみらい住宅支援事業』は、契約の期限、工事の着工期限、交付申請期限、完了報告期限などが設けられています。なお、国土交通省では、契約の締結などに関して、以下のように説明しています。

令和3年11月26日から令和4年10月31日までに契約の締結等を行い、住宅を整備・分譲する事業者が所定の手続により事務局(今後国が選定)の登録を受け、その後に着工したものが対象。
引用:国土交通省公式サイト

なお、イラストでスケージュールが紹介されていますので、こちらも確認しておきましょう。

引用:国土交通省資料より

参照データ:こどもみらい住宅支援事業の内容について(令和3年11月26日時点)

こどもみらい住宅支援事業の具体的な要件について

それでは、『こどもみらい住宅支援事業』の対象になるための、具体的な要件をそれぞれ見ていきましょう。上述したように、「子育て世帯・若者夫婦世帯」などと言われると、若者だけが対象と思われがちですが、その詳細を確認してみると、意外に幅広い方が対象になっているとわかります。ここでは、対象となる人の具体的な要件と、建物に求められる省エネ性能に関する要件をご紹介しておきます。

補助対象者の具体的な要件

まずは、「子育て世帯・若者夫婦世帯」の定義についてです。以下のいずれかに該当していれば、補助対象者となります。

  • 子育て世帯について
    子育て世帯とは、申請時点において、18歳未満の子(年齢は令和3年4月1日時点。すなわち平成15(20003)年4月2日以降出生)を有する世帯。
  • 若者夫婦世帯について
    若者夫婦世帯とは、申請時点において夫婦であり、いずれかが39歳以下(年齢は令和3年4月1日時点。すなわち昭和56(1981)年4月1日以降出生)の世帯。

子供や夫婦の年齢については、交付申請時点ではなく、あくまでも「令和3年4月1日時点」という点に注意しておきましょう。例えば、交付申請時点で子の年齢が18歳になっていたとしても、令和3年4月1日時点における子供の年齢が17歳なのであれば「18歳未満の子」と判定され、補助の対象になります。

それでは以下で、建物の要件についてもご紹介していきましょう。上述したように、『こどもみらい住宅支援事業』は、「省エネ性能を有する住宅ストックの形成を図る」という目的もありますので、建物は一定以上の省エネ性能を持っていなければいけません。そして、住宅の性能によって補助額が変わりますので、それぞれの住宅の詳細はおさえておくべきでしょう。

①ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented

まずは、「強化外皮基準に適合し、再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量が削減される性能を有する住宅」という要件で、簡単に言うとZEH住宅と呼ばれるものです。

『ZEH(ゼッチ)』とは「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略で、簡単に言うと「エネルギーを極力必要としない」、「自らエネルギーを創る」家の事を指しています。

もう少し詳しく言うと、「断熱性能が高い」「暖房や給湯などの設備は燃費の良いものを使用する」「太陽光発電などで再生可能エネルギーを自家発電する」などの性能を併せ持った住宅で、消費するエネルギーを従来から20%以上減らすうえ、使う分と同じだけのエネルギーを自家発電などで補うことを目指す住宅のことです。
今回の補助制度では、ZEH住宅の場合、「最大補助額100万円/戸」の対象となります。

なお、ZEH住宅にもいくつかの種類が存在するのですが、その全てが対象となります。

関連記事:むとうの家はZEH(ゼッチ)に取り組んでいます!

②高い省エネ性能等を有する住宅

次は、「高い省エネ性能等を有する住宅」です。この対象となった場合には「最大補助額80万円/戸」となります。具体的には、以下の3つの認定住宅です。

  • a) 認定長期優良住宅
    長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のこと
  • b) 認定低炭素住宅
    低炭素建築物とは、二酸化炭素の排出の抑制に資する建築物で、所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定を行うものです。
  • c) 性能向上計画認定住宅
    建築物省エネ法第35条に係る建築物エネルギー消費性能向上計画の認定が誘導基準に適合している旨を所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定を行うものです。

参照:国土交通省「長期優良住宅のページ
参照:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会より
参照:一般社団法人 住宅性能評価・表示協会より

③省エネ基準に適合する住宅

断熱等級4かつ一次エネ等級4以上を満たす住宅は「省エネ基準に適合する住宅」とされ、「最大補助額60万円/戸」の対象となります。

まとめ

今回は、令和3年11月26日に閣議決定された『こどもみらい住宅支援事業』の補助対象者や住宅に求められる性能についてご紹介してきました。『こどもみらい住宅支援事業』は、若者世代の住宅取得の後押しや、脱炭素社会に向けて省エネ性能を有する住宅ストックの形成が目的となる制度です。こういった補助制度は、意外に対象範囲が狭いものなのですが、今回の補助金はかなり幅広い人が対象となりますので、ぜひ利用したいと言えるのではないでしょうか?

特に、省エネ性の高い住宅は、そこに住み始めてから、生活にかかる光熱費が大幅に削減することができますし、国の補助により高性能な住宅が手に入れられる機会があるのであれば、逃すべきではないと思いますよ!