新型コロナウイルスの感染予防を考慮した場合、住宅はどのように変化していく?

2020年に入り、突然世界中を混乱に陥れた新型コロナウイルス。感染拡大が始まってから、すでに半年以上が経過したのですが、まだまだ収束の兆しすら見えない…というのが現状です。日本国内では、マスクの着用やうがい・手洗い、三密の防止などと言った感染予防対策が一定の効果があったのか、諸外国と比較すれば感染者数も少ないと言われています。しかし、そのような日本でも、緊急事態宣言の発令や飲食店の営業自粛など、新型コロナ問題発生以前と比較すれば大きな社会の変化がもたらされています。

このような状況の中、皆さんが一日の多くの時間を過ごす場所となる『住宅』も変化の兆しがみられるようになっています。例えば、対面での仕事が重視されてきた日本でも、通勤時にある公共交通機関での新型コロナウイルス感染リスクを考えて、積極的にテレワークの導入が行われるようになっています。しかし、いざテレワークの導入を行おうと思っても、普段過ごしている住空間がテレワークに適しておらず、仕事の効率性が下がってしまう…などと言った声も少なく無いのです。

新型コロナウイルスの感染経路がある程度分かってきた現在では、感染予防も考慮した家づくりが提案されるようになっています。そこで今回は、新型コロナウイルス問題を経験した今、今後日本の住宅がどのように変化していくのか?と言う点について考えてみたいと思います。

感染予防を考慮した間取りの変化

それでは、新型コロナウイルス問題を経験した今、住宅がどういった変化をしていっているのかについて、いくつかの例を挙げていきましょう。新型コロナウイルスの感染予防では「人との接触を減らす!」ということが非常に重要とされています。しかし、そうはいっても一日中家の中にいて、家族以外の人間とは一切接触しない…なんて生活は現実的ではありません。

大人は仕事がありますし、お子様も学校に行きますので、「いつ・どこで」新型コロナウイルスと接触してもおかしくない状況と言えるのです。このような状況の中、できるだけウイルスを家の中に持ち込まないため、感染予防を考慮した間取りが検討されるようになっています。

間取りの変化① 玄関の近くに洗面を

新型コロナウイルスなどの感染症は、小まめな手洗いやうがいが非常に重要だとされています。皆さんも、お子様が外から帰ってきた際には、手洗いとうがいを徹底して行うように教育していると思います。従来の家づくりでは、脱衣所などに洗面台を配置しておくというのが一般的でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を経験した現在では、より玄関の近くに洗面を置きたい…と考える方が増えているのです。

家に入ってすぐ洗面所があれば、お子様も手洗いやうがいを忘れることは少なくなるでしょう。さらに、汚れた・菌がついた手でさまざまな場所に触れる機会が減りますので、ドアノブなどを小まめに消毒して回る手間も少なくなると考えられます。
極端な例では、玄関・玄関ホールに洗面台のみを設けて、家に上がる前に手洗い・うがいができるような間取りにすることも考えられるのではないでしょうか。

間取りの変化② 玄関近くにアウター・鞄置きスペースを

最近では、玄関収納が人気の設備となっていますが、感染症予防を考慮した家づくりでは、玄関近くにアウターや大きな荷物・鞄を置いておくことができるスペースを作る間取りが考えられます。こういった設備を整えておくことで、アウターや鞄に付着したウイルスや花粉などを室内に持ち込まないようにすることができるのです。

近年では、『玄関→収納スペース→キッチン』などと言った導線を実現した間取りをよく見かけますが、主婦目線では買い物の際に家の中を行ったり来たりせず、荷物の整理ができると言う点で好まれているようです。こういった玄関収納を、室内にウイルスを持ち込まないようにするスペースとして活用できるのです。

間取りの変化③ テレワーク専用部屋を確保

冒頭でご紹介したように、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本国内の社会生活は大幅に変化しています。数年前から政府が推進する働き方改革ではテレワークの導入が推奨されていました。しかし、対面での仕事を重視する傾向にある日本では、実際にテレワークを導入する企業は少なかったのです。

しかし、新型コロナウイルス問題を経験した現在では、多くの企業がテレワークの導入に踏み切るようになっているのです。そこで問題となっているのは、住宅の中に落ち着いて仕事ができるプライベート空間が無い…ということなのです。例えば、web会議中に家族の声が入る…などと言った事もありますし、お子様が騒ぐ声で仕事に集中できない…などと言ったテレワークのデメリット面も注目されるようになっています。

今後の日本社会は、多様な働き方を認める企業が増加していくと予想されており、感染症の終息後もテレワークを続ける企業はあると思います。そのため、今後の家づくりでは、ファミリースペースとプライべートスペースをきちんと分けることができるよう、テレワーク専用の部屋を設ける方が増加すると予想されています。
実際に、大手住宅メーカーの中には、新型コロナウイルス問題があってから、防音機能を備えたテレワーク専用部屋を確保した住宅を公開した企業もあります。

感染予防を考慮した家機能の変化

新型コロナウイルス問題により、家の機能も変化すると考えられています。近年の家づくりでは、気密性が高く断熱性能が高い家を求める方が多かったのですが、感染症予防の事を考慮すると、より換気性能を高めたいと考える方が増えると予想されているのです。政府や自治体からも、「十分な換気が感染予防には重要」と注意喚起があるため、最近では地下鉄でも窓を開けて走行するようになっています。

家の換気性能を向上させれば、室内に入り込むウイルスや花粉を除去することが期待できます。最近では、空気清浄機などの性能があがっているため、これらの設備でウイルス対策を行うことも考えられますが、全ての部屋に空気清浄機を置こうと思えば、導入コストもランニングコストもかなり掛かってしまうのです。
そのため、家全体の換気性能を向上させ、ウイルスなどの感染症予防を行うようになると考えられるのです。ちなみに、現在の建築基準法では、既にに24時間換気が義務付けられています。ただし、単純に室内の空気を外に出し、外気を室内に取り入れるといった換気では、外気温の影響を受けてしまうようになるため、「夏は暑く、冬は寒い…」という本末転倒な住空間が出来上がってしまいます。したがって、感染症予防なども考慮した今後の新築住宅などでは、熱交換システムを利用した換気システムや熱源を各部屋に設置しない全館空調システムなどの導入が進むと考えられています。

これにより、密閉空間を回避し、家族の健康を守るウイルス対策ができた住宅の実現が期待できるのです。

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まとめ

今回は、これから迎える『Withコロナ時代』に向けて、感染症予防を考えたこれからの家づくりがどう変化していくのか?といった事についてご紹介してきました。

突然登場した新型コロナウイルスにより、日本国内でもステイホームが強いられるなど、2020年は本当にストレスのたまる年になった…と考えている方は多いのではないでしょうか。しかし、新型コロナウイルス問題に関しては、まだまだ「収束した」とは決して言えるような状況ではなく、2020年11月現在でも再び感染者数が増加に転じているのです。

しかも、最新の研究結果によると、人類は今後も新型コロナウイルスと共存していかなければならない…という様相が強くなっていますし、家族の安全を守るためには感染予防のことも考えた家づくりが重要になると言えるのです。この記事でご紹介した家づくりの変化は、とても簡単に採用できる物も多いです。したがって、現在新築戸建ての購入を検討しているのであれば、「感染症予防のために」という視点を持って家づくりを検討してみるのも良いのではないでしょうか。